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佐倉市の施設の省エネ施策:ESCO事業の論点整理

前回の記事では、地方行政における当初予算と補正予算の関係について説明いたしました。

佐倉市の一般会計における「当初予算」と「補正予算」の関係

今回の記事では、令和3年6月議会で審議された「補正予算」のうち、議員間で賛否が割れた「ESCOサービス委託」について論点整理します。

◆ESCO事業とは何か

耳慣れない言葉ですので、概要だけ説明します。

ESCO事業というのは、施設運営において、行政では実施困難な専門的な省エネ施策を、豊富なノウハウのある民間業者に任せて、結果省エネできた効果の一部を当該民間業者に報酬として支払う手法です。

ESCO・エネルギーマネジメント推進協議会の説明によると、「ESCO事業者は、省エネルギー診断、設計・施工、運転・維持管理、資金調達などにかかるすべてのサービスを提供します。」とあります。その他詳細は、以下のページがわかりやすかったので、リンクをはっておきます。

ESCO・エネルギーマネジメント推進協議会:ESCOのススメ

◆争点はどこか?

今回の補正予算では、臼井公民館と和田ふるさと館の2施設について、ESCOサービス委託をするための予算も含まれていました。

なお、この議案が可決されれば、10年間、両方の施設合わせて約2億4千万円を上限とする企画競争を実施できることになります。つまり、この二つの施設の水光熱費で、年間約2400万円の審議ですから、議員としてもしっかり検討する必要があるわけです。

なお、詳細は次回原稿である私の討論に譲りますが、本施策はESCOサービス委託をする前との比較において、予算的にも、エネルギー削減という観点でいっても十分有利になるよう設計されており、また過去実績の裏付けもあります。

上記から、私は本事業に賛成の立場です。

では、「ESCOサービス委託」を理由に本補正予算に反対する議員は何を問題としているのでしょうか。反対議員の意見を聞いた限りでは、突き詰めれば「民間活用の是非」が賛否を分かつポイントであると、私は感じました。

今回「ESCOサービス委託」に反対した共産党、市民ネットワーク佐倉、新社会党による反対討論とあわせ、当該事業に反対する議員と事前に実施した議論をあわせまとめると、以下のとおりとなります。

  • そもそも、これまでは市営施設の「水光熱費」の管理は行政が実施していた。
  • 現在、施設の省エネ手法はある程度確立されているので、市職員でも勉強すればしっかり対応できるはずだ。
  • 市職員でできることを外部に任せてしまうと、行政には知見が残らず、将来的に行政の専門性は失われる。

また、上記とは別に

  • 民間業者が利益を得られるほどの省エネ効果が期待できない。
  • 契約した民間業者が万一つぶれてしまった場合はどうなるのか不安。
  • 「ESCOサービス委託」の委託期間終了後、ESCO事業者が設置した設備の所有権が契約書に明記されていない。

などの理由もありました(とはいえ、上記会派所属議員が、十把一絡げに以上の点をもとに反対しているわけではないことを、予めお伝えしておきます。特に民間活用については、今のところ「すべて反対」である会派と、「部分的には認めるが基本的に極めて慎重」というグラデーションがあるように思います)。

特に民間活用については、決着することがない論点だと思います。

私は、過去何度となく表明しているとおり、民間活用に積極的な議員です。その理由は

  • 今後さらに加速する少子高齢化による財政の縮小に伴い、選択と集中は避けられない。
  • 佐倉市の一般職の職員は約1000名。もっとも財政を恒常的に圧迫するのは人件費であることから、市の職員を「増やす」方向性の事業展開には慎重になるべき。
  • さらに、民間事業者のほうが、公務員よりはるかに効果的、効率的に展開できる事業があることは確かであり、「最低限の予算で最大限の効果」を目指すべき行政として、民間活用を検討することは必要。
  • 以上から、「民間に任せられることは民間に」という流れは、「しっかり検討したうえで」という条件付にせよ止めるべきではない。

です。

とはいえ、民間活用に慎重な意見が市議会の中にあるということは、つまり議員間で議論が生まれ、そこから思わぬ論点や見落としを発見する可能性につながります。その意味で、一定の多様性の担保は、議会においてもとても重要なことであろうとも思っています。

上記を踏まえたとき、何の意見も表明せず、議論を最小限にし、数の力だけで議決するという振る舞いが、いかに市民の利益を棄損するかということも浮き彫りになります。

次回原稿では、6月議会最終日に私が実施した補正予算に対する賛成討論を掲載します。

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