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市職員の給与改定について

佐倉市職員の給与設定については、議員としては「毎年」避けて通れない議案のひとつです。
本年は給与アップとなった改定について、私は「賛成」しました。今回は、その理由についてお話します。

◆給与改定の基準、「人事院勧告」

公務員の給与は、「人事院」という機関が、従業員数50人以上の私企業の給与と比較して、毎年改定内容を関係公機関へ勧告します。

株式会社をはじめとする私企業では、業績、つまり「儲かり具合」によって従業員に支払う賃金を決めます。一方、公機関はそもそも利潤を目的とした団体ではないため、従業員給与の指標を決めづらい、という側面があります。

その意味で、「今年は、国民市民のために、皆さんグッジョブだったので給料を上げよう!」なんて主観的で乱暴な判断ができないのは当たり前ですが、それはつまり「下げよう!」、あるいは「据え置きだ!」という判断にしてもしかり、ということが言えます。

他方、公務員とはいえ時代の要請にあわせて、給料の上げ下げは実施しなければならない。そうしないと、たとえば物価が高騰(暴落)しているのに公務員の給料は据え置き、といった現象がおきてしまいます。

そこで、公務員給与の「上げ下げ」を査定する機関が「人事院」というわけです。佐倉市では、私の討論原稿にもありますが、常にこの「人事院勧告」に従って給与査定をしている。そんなわけで、平成21年から23年までの三年間などは、人事院勧告に従って、給料は下がり続けましたし、その他にも減額や据え置き査定となった年はたくさんあります。ちなみに、本年の改定では、市の職員の給与は人事院の勧告にあわせて上がります。

また、意外と見落としがちな論点ですが、市役所職員の仕事は、ほぼすべて市民サービスです。たとえば、先日の台風などの災害について、被害を最小限にするべくなされる都市計画や防災計画も、災害後の復旧計画も、被災者支援もおおよそ基礎自治体の仕事です。また、高齢者や児童福祉もしかり、市道や水道や公園の整備もしかり、数え上げればきりがありません。

市の職員は、難しい採用試験を受けるわけですから、給料が低すぎれば当然市役所職員の成り手は減り、能力も相応の人材しか集まりません。

今後減少傾向にある人口動態や、IT化の進展による業務効率化を前提に、職員数を不用意に増やすことには反対ですが、生涯佐倉市に住むことを決めている私としては、仕事ができない職員に市の仕事をしてほしいとは思いません。

◆平均給与月額にご用心

もう一つの視点が、「平均給与月額」です。
総務省統計における、佐倉市の職員の平成30年度の「平均給与月額」は、確かに千葉県内3位です。

他方、この「平均給与月額」という数字は、扱いを慎重にしなければなりません。

例えば、A市とB市があるとします。わかりやすいように、どちらの市もまったく同じ以下の給与体系であったと仮定します。

  • 部長:月額50万円
  • 課長:月額35万円
  • その他職員:月額25万円

A市、B市とも職員数を揃え120名とします。A市は、部長5名、課長15名、その他職員100名。B市は、部長10名、課長45名、その他職員65名である場合を想定します。

この設定の場合、職員数も給与設定も同じなのに、 職員一人当たりの一ヶ月の平均給与額は、 B市のほうが3万5,000円以上高くなります。

さらに、仮に「B市のほうが市民の数が多い」というパラメータを加えます。そうなると、職員一人当たりにおける市民数が多くなるので、自然B市の職員のほうが残業時間は増えます。仮に、A市において残業がつく課長以下の職級「その他職員」一人当たりの1ヶ月の平均残業時間を20時間、B市のそれを40時間とします。

残業代の設定は、A市、B市とも1時間1,000円とした場合、職員一人当たりの一ヶ月の平均給与額は、B市のほうが4万円以上高くなります。

ちなみに、「市の人口を職員数で割った数」でみると、佐倉市は千葉県内で2位、つまり職員一人当たり人口が、千葉県で2番目に多い市です(出典:平成30年度千葉県資料:1職員数【定】(PDF:596KB))。

◆職員の給与査定は何を軸にみるべきか?

職員の給与設定を考える際目を配るべきは、「平均給与月額」ではなく、「同じ職級にある職員に設定された市別の給与格差」であるはずです。仮に、「課長という職級の給与が、A市は他の市より無意味に高い」ならば、A市の課長給与は下げる、という判断が必要ですが、その判断について「平均給与月額」を軸に考えるのは、控えめに言って「無理筋」だと考えます。

付け加えますが、地方公務員の給与額を、同等の職種、経歴に相当する国家公務員の給与額と比較するために用いる「ラスパイレス指数」という数値があります。

この数値が、私が知る限り唯一客観的に「職員に設定された市別の給与格差」を見るのに使える指数ですが、千葉県内で佐倉市は9位。佐倉市の人口規模が千葉県内で10位であることを考えると、「高くも低くもない数値」に思えます。

そんな背景もあり、私は本議案に賛成しました。上記を踏まえて、私が議会で実施した討論原稿を次ページに掲載します。

◆議員はこういう議案にこそ賛否の理由を公開せよ

これは最近の私の記事の締めにお約束のように書いていることですが、こういう「賛否が分かれる議案」こそ、その理由をしっかり市民の皆さまに伝えるべきだと考えますが、最終決定する権限を持つ議員の説明はほとんどありません。

たいていの市民の方は、市役所職員の給与を「上げる」と聞くと、眉をひそめます。そういう議案をこっそり通すのは、その場は楽ですが、説明がなければ市民の不信感は募ります。

うるさいほど指摘していますが、佐倉市には「議会における最高規範」である「議会基本条例」があり、その前文で「積極的な情報公開を通じて市民への説明責任を果た」さなければならない、とあります。

特に、「責任会派」を標ぼうされている皆さん、自らに「責任」という冠を付けた以上、相応のふるまいをすべきであると考えますがいかがでしょうか。

◆そういえば、議員のボーナスアップ議案が可決されました

なお、私は「職員の給与改定」議案には賛成しましたが、同じように上程された「議員のボーナスアップ」議案には反対しました(その理由をお知りになりたい方は、次の原稿をお読みください)。

しかし、「議員のボーナスアップ」議案は、さくら会、自由民主さくら、公明党と無会派1名の議員で構成される、いわゆる「責任会派」の皆さま18名の「賛成多数」により可決されました。

私の場合、本年のアップ分は、今年度中にチラシ等で使い切ります。

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書 名:地方議会議員の選び方 佐倉市の事例を参考に
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