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2.佐倉市の水道事業について:2021年7月現在における概要

1.佐倉市の水道事業について:はじめに
2.佐倉市の水道事業について:2021年7月現在における概要
3.佐倉市の水道事業について:水道料金の値上げと広域化


◆佐倉市の上下水道事業の基礎的要素

自治体の上下水道事業は独立採算制

佐倉市だけの話ではないですが、上下水道事業については、市が経営する「社内カンパニー」という性質を持ちます。そんなわけで、会計も市の一般会計からは切り離され、独立採算制をとっています。
そのあたりの説明については、高槻市のサイトがわかりやすいので、そちらをご覧ください。
水道事業の経営のしくみ

さらに深く知りたい方は、ニッセイ基礎研究所の文章をご覧ください。
岐路に立つ日本の水道~今、考えたい公共サービスの受益と負担

佐倉市の水道水はどこから取水しているか

現在の「佐倉市の水道水」はどこから取水しているのでしょう。ここでは、「2021年7月」を現在として、その直前の状況から説明します。内訳は以下のとおりです。
【以下出展】2020年10月12日更新:佐倉市公式サイト

  • 佐倉市内32本の井戸から取水し、市内3箇所の浄水場で水道水にしたもの:62%
  • 利根川水系(印西市木下、印旛沼の2点)から取水し、千葉県柏井浄水場で水道水にしたもの:38%

2021年6月16日の私の一般質問(令和2年度の八ッ場ダム供用開始に伴う変化)に対する市答弁で確認できた現状

  • 佐倉市内32本の井戸から取水し、市内3箇所の浄水場で水道水にしたもの:58%
  • 利根川水系(印西市木下、印旛沼の2点)から取水し、千葉県柏井浄水場で水道水にしたもの:42%

このように2021年6月の私の一般質問で、佐倉市の水道水の内訳が変化していることがわかりました。

つまり、令和2年度から八ッ場ダムが供用開始されたために、井戸水の割合が減少したかっこうです。

なお、将来的に「霞ケ浦導水」が完成し、佐倉市が受水できる状態が整った場合、佐倉市の水源である32本の井戸のうち24本の井戸からの取水は完全になくなります。

なお、八ッ場ダムや霞ケ浦導水ができたからといって、それらの水源から取水するわけではありません。それらの水源の開発や運営について、市として分担金を支払っていることで、佐倉市をはじめとする各市は分担金に応じた「水利権」を手に入れる。よって、その水利権によって生じた取水量を、佐倉市の場合これまで同様利根川水系から引いてくる、よって相対的に井戸水の割合が減少する、ということになります。

さて、いずれにしても井戸水は、いうまでもなく「地下にある水」ですから、土壌(大地)という天然のろ過を通して存在しているため、水質はおおむね良好です。また、目には見えないものの物理距離としては「一番身近にある水源」であるため、取水コストは非常に低い。

しかし、このきれいで安い水源は、先の説明のとおり「霞ケ浦導水」という水源が確保されたら、例外的に許可を受けている24本の井戸が使えなくなってしまいます。

この措置は、千葉県が制定した「千葉県環境保全条例」が前提となっています。この条例は、地盤の沈下の防止及び地下水の保全を図るため佐倉市をはじめとする県内の指定地域(計28市町)では、地下水の採取は許可制としており、このうち佐倉市の井戸32本中24本は「代替水源が確保された場合は速やかに転換すること」を条件に許可を受けています。

千葉県:法令による地下水採取規制

では、なぜ千葉県は条例で井戸水のくみ上げを規制するのでしょうか?
その理由は、千葉県が公表している「千葉県の地盤沈下現況」という資料の冒頭に、比較的わかりやすく書かれています。
千葉県:千葉県の地盤沈下現況【PDF資料】

該当部分を要約すると、およそ以下のようになります。

  • 地下水のくみ上げなどで、昭和40年代の半ばに年20㎝を超える地盤沈下が確認された。
  • 井戸水のくみ上げを規制したら、地盤沈下量は大幅に減少した。
  • 地盤沈下は、①発生すると回復不可能であること、②進行が緩慢で被害が大きくなるまで公害として認識されにくいこと、という特性がある。

以上のことから、今後の地盤沈下を食い止め、且つ地下水の保全を図るため、地下水の取水は許可制とする県条例を制定し、これに基づき「地下水採取規制」を行う、というものです。

井戸水は、先の説明のとおり「きれいな水」ですから、浄水場における浄水施設は比較的簡便なもので、水道水にすることができます。

その意味で、佐倉市民としては、できるなら井戸水を使い続けることができればそれが一番ありがたいわけです。しかし、もし佐倉市をはじめとする千葉県内の市町村が、かつてのように野放図に井戸水を取水し、佐倉市や影響を受けた遠隔地で深刻な地盤沈下がおきてしまったら取返しのつかないことになるのもまた事実です。ちょっと専門的な話になりますが、地下水とは「帯水層」という層に含まれた水をくみ上げることで得られます。帯水層は縦横無尽に広がっているため、「佐倉市で地下水を汲み上げたことで、●●市が地盤沈下した」ということもありうる。地盤沈下も公害であり、一度沈下してしまった場合、元の状態に復活させることがほぼ不可能という意味において、他の公害より深刻な側面も持ち合わせているのです。

以上から、「井戸水を使い続けさせてほしい」というからには

  • 地盤沈下を引き起こさない年間取水量・取水方法を科学的に立証し
  • 当該取水量を、佐倉市をはじめとする市町村で分け合う合意をしたうえで
  • 千葉県に上記の内容を提示し、条例の例外として認めてもらう

必要があります。

もちろん、千葉県では地下水の取水実態や地盤変動量の調査・研究を続けています。その報告書を読みますと、地質別、エリア別、深度別、水脈別等を基礎とする地下水の実態と地盤沈下の変動量といった質の高い研究がなされていることは分かりますが、いかんせん「明確な因果関係」や「地盤沈下を引き起こさない正確な取水量」を解明するには、さらに相当な追加予算と時間が必要なのだろうと思います。また、「結論ありき」で調査依頼することは絶対にできませんから、莫大な予算と長い調査の結果「水道水に使うボリュームの井戸水の取水は、地盤沈下の原因になるためやめるべき」ということになることも、十分にありうるわけです。

以上から、私たちの水道水は今のところ

  • 現在の千葉県環境保全条例による地下水採取規制により
  • 水道水用に取水している32本の井戸のうち、24本は代替水源が確保された場合は速やかに転換せざるを得ない

という方向で八ッ場ダム・霞ケ浦導水事業が動いているわけです。


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