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2020年8月12日一般質問:佐倉市の避難所運営委員会や避難訓練など

本質問を公開するにあたって

本質問の原稿を整理し、公開するのは2022年1月14日です。改めて読み返して思うのは、「これは継続的にしっかり提案を続けなければ」ということと、「防災行政を充実させるためには、担当部局の人員が少なすぎる」ということ。

行政の一番の役割は、当該自治体に住む人たちの命を守ることです。

日ごろからの継続的な訓練と、市民と行政の効果的な連携は、大災害の折に確実に「たくさんの人の命」を救います。

社会現象は実験ができないため、「しっかり取り組んだ場合」と「そうでない場合」でどれだけ違いがでるのか、ということを実際の数値で出すことができません。そのため、ともすると「やってもやらなくても評価は同じ」という意識になりがちですが、決してそうではない。

防災対策は、未だ不足している部分が多い分野であると思っています。


台風シーズンが到来しました。昨年佐倉市が見舞われた3回の風水害を思い返すと同時に、本年はコロナ禍も重なり、万一の際の対応の一つ一つがより難しいものになっているものと思わずにはいられません。

そんな中、コロナ関連予算も併せ、太陽光発電機、モバイル用蓄電池、夜間照明のほか、現状防災井戸の備えが不十分な指定避難所に飲料水の確保(髙橋注:手前みそで恐縮ですが、以上は2019年の一般質問にて私が要望したことにより実現したインフラ整備です。一般質問とは、その意味でとても重要な機会なのです)をいただくなど、感謝しております。また、避難所に感染対策用パーティションや多目的簡易ベッドなども配備され始めており、着実にインフラ整備が進んでいる印象であります。そこで、今回は専ら災害時の避難所運営を中心に質問をさせていただきます。

危機管理専門メディア、リスク対策ドットコム編集長の中澤幸介氏の報告によれば、震度5弱以上の地震は昨年だけで10回近く発生しました。また、今年も3月13日に石川県能登地方で最大震度5強の地震が発生し、同県内では輪島市で3か所、穴水町で4か所の避難所が開設されたとあります。

さて、佐倉市の避難所運営マニュアルは、震度5弱以上の地震が発生したら、地域の市職員である避難所職員は適宜避難所に参集するよう書かれております。しかし、実際の地震発生時にはどうなるか。震度6以上の災害になれば、避難所職員自身が被災することもあり得ることであります。また、佐倉市では指定避難所のほぼ全てが小中学校です。学校で授業が行われている環境で、職員が駆けつけられない中、被災者や保護者が学校に殺到することも十分に考えられます。実際東日本大震災では、千葉県山武市の緑海小学校でも子供たちが大勢残っている中、被災しました。発災直後に停電になった状態で保護者、被災者が一気に押し寄せ、学校職員がほとんどの避難所運営業務を担った生々しいレポートが報告されています。

そのような過去の経験を踏まえ、佐倉市のお隣でもある千葉市が作成した避難所運営委員会についてという資料には以下のような記述があります。読み上げます。

災害の規模が大きければ大きいほど、職員の到着の遅れや被災などにより避難所の開設が大幅に遅れる。十分に職員を派遣できずに避難所運営に支障を来すなど、現実問題として職員だけでの避難所の開設や運営が困難となります。突如として発生する災害に対し、避難所を開設し、まずは発災直後から3日間、72時間の混乱期においては住民自らが生き残るための最低限のことを自分たちで最優先に行っている必要があります。そのためには、事前に避難所となる施設を中心に地域の町内自治会、自主防災会などが一体となった避難所運営委員会を設置し、災害発生時に地域住民同士が連携しながら主体として避難所を開設、運営を行う体制を整えておく必要があります。

以上のような前提で避難所体制の構築を推進しているお隣の千葉市の取組を佐倉市としてはどのように受け止めるか、見解を伺います。

執行部(市役所)回答

市長(西田三十五):
昨年の台風、大雨では、佐倉市でも大きな被害がございました。今年も気象変動の影響で大型化する台風などによる被害が危惧されております。また、いつ、どこで大規模地震が起きてもおかしくない状況であり、さらには新型コロナウイルス感染症の拡大時における避難所運営の在り方など課題も多い中で、市民の命を守る防災対策は重要な施策の一つでございます。
千葉市が推進している平常時からの避難所運営委員会設置につきましても、佐倉市の風土である好学進取の精神から、取り入れられることは取り入れてまいりたいと考えております。
詳細につきましては、危機管理室長からお答えいたします。

危機管理室長(栗原浩和):
議員ご紹介の千葉市が推進しております避難所運営委員会につきましては、災害発生に備え、平常時から避難所での様々なルールづくりや避難所の開設、運営訓練などを行っている取組でございます。ふだんから協力し合うことにより、避難される市民にとっても顔の見える避難所となり、安心して避難できるなどのメリットも考えられます。
昨年の災害での避難所開設は短期間ではありましたが、大規模な災害が発生した場合には長期間の避難所開設が必要となることが想定されます。そのような場面に備え、平常時から委員会を設置し、避難所の開設や運営の訓練を行っておくことは、互いに助け合う共助の構築として有効でありますことから、昨年の災害で防災意識が高まっている自主防災組織や自治会と協議を行ってまいりたいと考えております。

ありがとうございます。総論といたしまして、避難所運営委員会の開設に前向きな方向の答弁をいただきまして、感謝を申し上げます。
さて、佐倉市は、自治会、町内会、区を足し合わせ、254団体で構成されています。その活動の一つに防災活動が位置づけられています。そこで、佐倉市内の自主防災組織の設置率、防災訓練をしている自治会の数の内訳をご教示ください。

執行部(市役所)回答

危機管理室長(栗原浩和):
佐倉市内の自主防災組織は、現在116団体でございます。また、年1回以上の防災訓練を行っている自主防災組織は19団体、自治会は22団体でございます。

ありがとうございました。256団体のうち116ということではなくて、複数の自治会から幾つか合わさって自主防災組織をやっているという事例もあるというふうに聞いておりますので、全ての自治会が今後自主防災組織に加盟することができるように、引き続きご助力のほどお願いをいたします。

私が調べた限り、自治会ごとに自主防災組織も設置せず、避難訓練も一切実施していないところもあれば、複数の自治会で話し合い、独自で避難所運営委員会を開設し、年に複数回、災害時の避難所の模擬訓練を実施している地区など、取組に大きなばらつきがあることが分かりました。

災害の備えは、まず自助、共助の原則とはよく言われるところです。しかし、これまで一切防災対策に取り組んでいない自治会は何をどうしていいか分からないというところが本音であり、自助、共助の体制を構築したくてもできず、高齢化の波が押し寄せ、不安と諦めで身動きが取れない状態であるようです。

結果、現場では何が起きているか、自分たちが避難する可能性がある学校のどこに防災備蓄があるか分からない。被災者の受入れや安全確保の方法など考えたこともない。そもそも鍵を開けるのは誰だっけという中で、行政が何とかしてくれるでしょうという思いだけで災害を考えている住民がほとんどという地区もあるように聞いております。この状況を放置するならば、基礎自治体の役割を果たしているとは言いがたいものがあると考えます。

また、佐倉市にある避難所運営委員会には千葉市や成田市のような市からの枠組みの提案がないがために、地域まちづくり事業実施団体、いわゆるまち協の立てつけを利用して避難所運営委員会を独自で組織しているところもあるように聞いております。

本来避難所運営委員会の役割を達成するには、住民と行政が一体となった防災体制の構築が不可欠です。他方、住民の危機意識から発展していった組織の場合、行政や避難所の施設管理者たる学校などとの間に防災に対する認識のずれが生じることもあるように思います。

例えば阪神・淡路大震災の後、兵庫県教職員組合などがまとめた資料にこのような記述がございました。学校と教職員は、予測されざる事態の中で何らの指示、指令も情報もないままに、学校に避難してなだれ込んできた収容力を超える地域住民を受け入れ、その生命の保護と避難所と化した学校の運営について無限の責任を負わされたということになる。このようなイメージが現在指定避難所として設定されている学校にあるでしょうか。

また、地域まちづくり事業実施団体は、割り当てられる助成金の使い方に制約がございます。例えば要綱を読むと、助成金の交付の対象となる事業の事業期間は4月1日から翌年の2月末日までとするとあります。この場合、活動の予定や報告をするためのウェブサイトの運営も4月から2月末日までの期間しか助成金の対象となっていません。通常サーバーの保守費は年間契約であります。3月1か月を除くような運用をするのは、保守面でも費用面でも全く非効率です。さらに、3月に避難所運営委員会の活動をしなくてもいいのか。つまり3月に地震やその他災害が発生しないのかと考えれば、この運用がナンセンスであるということもお分かりになると思います。

以上から、行政が制度整備も含む旗振りをして、自治会ごとの自主防災組織の設置と避難所運営委員会の開設が急務であることをいま一度指摘をしておきます。具体的には、自治会ごとの自主防災組織率、避難所を分母とした避難所運営委員会の組織率と定期的な訓練の実施率について具体的な数値目標を定め、取り組んでいただきたい。

前述の千葉市や成田市は、数値目標達成のために着実に前に進んでおります。本件は、今後も引き続き定期的な質問をさせていただきます。また、さきの地域まちづくり事業実施団体については、要綱でホームページのホスティング費用を助成金の交付対象となる事業期間の例外として、領収書の提出をもって年間契約の助成金交付を認めるよう改正する意思があるか、執行部の考えを伺います。

執行部(市役所)回答

市民部長(川島千秋):
地域まちづくり事業につきましては、支援対象事業に対して経済的な支援として助成金を交付していることから、適切に支出されているか十分な審査を行う必要があると考えております。現在約80の対象事業ごとに活動報告や収支決算書、領収書をチェックし、その上で関連部署や部局長による審査を経て、年度末の3月31日までに助成金額を確定させる必要があります。この審査期間を確保するために、毎年度2月末日までを事業期間とし、その時点で確定し、確認できる活動実績と経費を助成対象としております。したがいまして、例外規定を設けることは現在のところ考えてはおりませんが、引き続き当該助成金の目的や成果などを検証する中で助成対象とする事業期間について研究してまいります。

事務上のもろもろはあろうかと思いますけれども、市民協働のやる気をそぐような規定はぜひ適宜見直しを行っていただきたいというふうに思います。ご検討を引き続きよろしくお願いいたします。

次の質問に移ります。佐倉市の指定避難所一覧を見ると、洪水、崖崩れ、地震、大規模火事、内水氾濫という5つの災害種別ごとに利用可能な避難所が整理されています。その中でバツがついているのは、洪水時の臼井小学校のみであります。

確かにハザードマップを見ても、過去の事情を勘案しても、臼井小学校は洪水時に逃げ込むことはできません。となると、例えば臼井田などの臼井小学校学区の住民の方々が洪水時に想定される指定避難所は臼井西中学校、臼井中学校、間野台小学校となりますが、ひとしく遠い。

その意味で言えば、例えば土浮などの地区にお住まいの方も、想定される指定避難所は内郷小学校となりますが、これも距離があまりに遠い。距離の問題で言えば、上別所、米戸、瓜坪新田、岩富の北側などの指定避難所までの距離に問題があると考えます。

佐倉市では、指定避難所以外の避難施設としては帰宅困難者等一時滞在候補施設と臨時避難所の候補施設がありますが、それでは制度面においても分かりにくく、数の上でも不十分と考えます。そこで、それらのほかに地域住民が一時的に避難することができる一時避難所を指定、あるいは指定しないまでも市民に分かりやすく災害時の一時的な避難所の用途と位置づけを広報し、防災計画の前提とする必要があると考えます。例えばさいたま市などは、身近な地域の防災拠点という名称で地域住民から登録してもらって、適宜防災備蓄の助成などを実施している事例もございます。
以上を踏まえ、執行部の見解を伺います。

執行部(市役所)回答

危機管理室長(栗原浩和):
現在佐倉市では、一時避難場所の指定は行っておりませんが、佐倉市避難所運営マニュアルの中で、地域の皆様であらかじめ決めておいた公園や空き地等に一時避難を行い、地域住民相互に安否確認をした後、指定避難所へ避難していただくようお願いしております。今後につきましても、避難方法など市民の皆様により分かりやすいお知らせができるよう努めてまいります。

ありがとうございました。では、引き続きよろしくお願いいたします。

次に、2月定例会で伺った印南地区の避難所についてであります。印南小学校は、市内で唯一浸水想定区域と急傾斜地崩壊危険区域に囲まれた指定避難所であります。他方、佐倉市の指定避難所一覧では、洪水にも崖崩れにも避難してよしとする丸がついております。特に洪水について言うと、昨年の大雨でも小学校周辺の道路があらかた水没してしまったというような地元の方のお話を聞きました。確かに小学校は水没しないのかもしれませんが、そのような場所が洪水時の指定避難所として適切でしょうか。見直しをお願いしたいのと同時に、やはり印南地区の丘側、具体的に言えば青少年体育館や江原台自治会館などを先ほどの一時避難所に指定いただきたいこと、さらに印南地区の丘側に防災井戸の設置をお願いしたく思います。
以上3点につき、執行部の見解を伺います。

危機管理室長(栗原浩和):
指定避難所である印南小学校付近につきましては、議員ご指摘のとおり、土砂災害警戒区域と浸水想定区域となっております。しかしながら、災害時の避難は必ずしも近くの指定避難所に行かなければならないということではございません。様々な災害では、その災害に対して安全を確保できる避難所を開設いたしますので、印南小学校の指定避難場所を見直す予定はございません。また、高台に位置する江原台自治会館や青少年体育館を一時避難場所として指定する計画はございませんが、地域の皆様が一時的に身を守るために避難する場所としていただき、その後に開設された指定避難所へ避難していただければと考えます。
なお、印南地区の丘側に防災井戸を設置する計画は、現時点ではございません。
(※髙橋注:以前の質問掲載時にも記述したとおり、丘側の防災井戸設置については、江原台自治会の自治会長と私が西田市長から設置を約束されましたが、未だにその約束は果たされていないことを記録しておきます。)

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