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3.佐倉市の水道事業について:水道料金の値上げと広域化

1.佐倉市の水道事業について:はじめに
2.佐倉市の水道事業について:2021年7月現在における概要
3.佐倉市の水道事業について:水道料金の値上げと広域化


◆佐倉市を取り巻く水に関する環境と令和4年度の水道料金の値上げ

以上のような理由で、佐倉市は千葉県環境保全条例による「地下水採取規制」により、水道水の水源のうち、代替水源が確保された場合は転換することを条件に許可を受けた井戸24本は、八ッ場ダム・霞ケ浦導水といった水利権が確保されたら、これに転換する方向に舵を切らざるを得ません。
また、その他として、人口減少、施設の老朽化などに伴う改修等の必要性等の要因を勘案し事業を試算したところ、現状のままの料金体系で事業を続けた場合、令和元年度50億円あった預金残高が、令和9年度には残高がマイナスになることが明らかになりました。

冒頭説明したとおり、水道事業は「独立採算制」が前提であり、事業が成り立たなくなったら経営破綻しますから、地域住民の生活もまた成り立たなくなります。また、預金残高が0になる、ということは大災害などの緊急事態に、予算的に一切対応できないという問題に直面することになります。

そこで佐倉市では、この状況を踏まえ、学識経験者や市民の方々の委員による「懇話会」を設置し、6回に及ぶ議論を重ね、持続可能な上下水道事業に対する「提言」をとりまとめました。
佐倉市水道料金及び下水道使用料のあり方に関する懇話会

提言では、預金残高を15億円保持しつつ、持続可能な水道事業の継続のため、令和4年度に水道料金を7.4%値上げすることが妥当である、等の内容が公表されました。

その他、この懇話会ではいろいろ重要な提言が発表されましたが、そのあたりを説明し始めると長くなりますのでひとまずおきます。

◆水道事業の広域化

以上の議論とは別のところで、日本では「水道事業の広域化」の必要性が言われるようになってきています。

総務省が平成30年に公表した「広域化の取組状況等について」という資料の冒頭に、以下のような趣旨の文章が掲載されています。
広域化の取組状況等について【PDF資料】

冒頭の文章を要約すると、日本の水道事業は

  • 人口減少等にともなう料金収入の減少
  • 施設の老朽化等にともなう施設修繕、改修、更新等の必要性

などで、これまでどおりの水道事業の維持が困難になってきている。
そのため、経営基盤の強化は全国的な課題である。
と、現状を分析しています。

これは佐倉市においてもいえることで、先の説明とおり現状のままの料金体系で事業を続けた場合、令和9年に残高がマイナスに転じてしまうわけです。

さらに先の資料では以下のように続きます。
「人口減少が著しい団体をはじめ経営環境が厳しい中小規模の公営企業では、職員数が少ないこともあって、問題がより深刻であり、現在の経営形態を前提とした経営改革だけでは、将来にわたる住民サービスを確保することが困難」である。

行政としては、そのような状況を放置するわけにはいきませんから、何とか手をうつ必要がある。その手法の一つが「広域化」というわけです。

行政は、事業をベースに考えると、ある程度「最適な規模」を試算することができます。極端な例をあげると、100人しかいない市町村があった場合、100名が納める市税で市役所を運営し、福祉行政、道路行政、学校運営などを賄うのは「小さすぎる」がゆえに困難です。「では、基礎自治体ってどのくらいが最適なの?」という話になると、それは地勢要素、人口周密度、産業構造、インフラの整備状況などにより一概に言えるものではないですし、その自治体の歴史的な背景や住民の愛着などで「このくらいの規模が最適だからまとめましょう」といってもなかなかうまくいくものではありません。

他方、水道事業といった事業単体でいえば、住民の愛着という要素は考慮する必要はありませんので、「規模的に適当なサイズ」にまとめるのは、市町村合併などよりはハードルは低い。

以上のような背景もあり、国は「令和7年まで広域化して、最長10年間の広域化にかかる予算に対して1/3を拠出する」と言っています。要は、「水道事業を継続させるために、しっかり広域化してくれれば1/3の費用は国が持ちますよ」というわけです。

さて、佐倉市が水道事業を広域化する場合、どういうまとまりで検討されているか、というと、そのあたりも千葉県がしっかり指針を出しています。

千葉県:県内水道の統合・広域化の検討

千葉県としては、強引に「はい、この市とこの市は水道事業で合併してください」という進め方はできません。地域の特性にあわせて検討してください、という態度です。

このあたり、大事なところですので県が公開している資料の一部をそのまま掲載します。

県内水道の統合・広域化の進め方(取組方針)
県内水道の目指す姿

  • 県は、広域自治体として、広域的な水源の確保及び水道用水供給事業を担い、市町村は、基礎自治体として、住民生活に密接なサービスである末端給水事業を担うことを基本とする。
  • この基本的な考え方に基づき、県は、県内水道用水供給事業体の水平統合を目指すこととし、まずは、九十九里地域・南房総地域の水道用水供給事業体と県営水道との統合をリーディングケースとして進めていく。
  • その他の地域(北千葉地域、東総地域、君津地域、印旛地域)との統合・広域化については、それぞれの地域の実情に配慮しつつ、市町村等と十分な対話を行い、合意形成を図りながら進めていく。
  • 併せて、統合・広域化の目的を達成していくためには、市町村等が担う末端給水事業についても、運営基盤(技術力・経営力・財務力)の強化を図ることが重要であることから、統合・広域化の促進、支援に取り組む。
  • また、県としては、以上の考えを踏まえ、県内水道のあり方に関する方向を示す水道整備基本構想(千葉県版地域水道ビジョン)等の策定に取り組む。

要約すれば、広域化は、九十九里の先行事例をもとに、各地でしっかり検討してください、ということです。
なお、佐倉市は県の仕分けでは「印旛地域」とされています。この印旛地域というのは、具体的には冒頭の説明にでてきた「印広水」という一部事務組合を構成する、成田市、佐倉市、四街道市、八街市、印西市、白井市、富里市、酒々井町、栄町の9市町、というわけです。

以上から、「印広水」では、この9市町で広域化した場合しっかりメリットがでるのかどうかを確認するため、水道事業に関する調査などを手掛ける株式会社日水コンに業務委託し、報告書をまとめました。

以上が、2021年7月の佐倉市の水道事業を取り巻く環境です。


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