2019年6月26日一般質問:防災の備えと訓練について
6月26日に私が実施した一般質問原稿を掲載いたします。
今回の議会での質問は、大きくは「防災の備えと訓練について」と「高齢者ドライバーについて」の二つです。本日アップするのは、「防災の備えと訓練について」であります。
これは、選挙公約であげている政策ですので、見覚えのある方も多いかと思います。
原稿が長いので、先に要点を絞って紹介します。
◆要点
- 佐倉市は、地震多発地帯(今後30年以内に震度6弱以上の地震が発生する確率:85%)に立地しています。
- 大地震以外でも、近年のゲリラ豪雨や台風の大型化をみるとき、佐倉市が近い将来激甚災害に襲われる可能性は、「限りなく高い」といわざるをえません。
- その意味で、「飲料水の備え」、「電力の備え」、「財政の備え」の3つの十分な備えとあわせ、「実践的防災訓練」が、市民の命を守るために重要です。
- 「飲料水の備え」については、まず「まったく飲料水の備蓄がない」5つの指定避難所(印南小学校、臼井小学校、根郷小学校、内郷小学校、佐倉小学校)に、早急な飲料水の備蓄をお願いしました。
- 「電力の備え」については、市内39箇所あるすべての指定避難所に、太陽光発電などの自然エネルギーによる夜間照明とあわせ、スマートフォンや携帯電話などの充電が可能な照明の設置をお願いしました。
- 「財政の備え」については、市の緊急時用の予算である「財政調整基金(以下「財調」とします)」について、近年減少傾向にある点について、懸念を表明しました。またあわせ、大きな災害に備え、しっかりした財調の備えと、民間保険などを使った危機分散手法について検討をお願いしました。
- 「実践的防災訓練」については、指定避難所での、災害を想定した実践的な訓練の有効性を、具体的事例を交えて紹介しました。また、佐倉市での「実践的防災訓練」におけるバックアップ体制や資料の整備などについてお願いしました。
なお、以下は私の「個人質問用原稿」をほぼそのまま掲出しています。
6月26日の私の質問内容は、事情により本原稿を一部割愛したり、言い回しを変えたりした箇所がありますが、趣旨は変わっておりませんのでご確認ください。
また、私の質問に対する佐倉市からの回答については、食い違いが生じると問題があるため、佐倉市が議事を公開しましたら、追記させていただきます。
なお、原稿がとても長いです。その旨、ご了承ください。
◆防災の備えと訓練について
佐倉市などの地方自治体がある意義は、そこに住む人々の命と生活を守り、支えることです。とりわけ、命を守る、という点は、市の存在意義の基礎であると考えます。
さて、千葉県は地震多発地帯です。
昨年6月26日、政府の地震調査委員会が、全国各地の地震の発生確率をまとめた予測地図を発表しました。
当該発表によれば、佐倉市と境を接する千葉市で、今後30年以内に震度6弱以上の地震が発生する確率は、なんと85%です。
大震災のほかにも、近年のゲリラ豪雨や台風の大型化をみるとき、佐倉市が近い将来激甚災害に襲われる可能性は、「限りなく高い」といわざるをえません。
他方、大災害に対する備えは、「いくらあっても足りない」と感じるものであるのも事実で、完璧を求めた場合、市の財源が枯渇する、という問題もございます。
まずは、自助、共助という考えが必要で、佐倉市においても、現状各家庭に万一の備えを、という啓発をしているところかと思います。
しかしながら、大災害の折には、自助、共助ではどうにもならない最悪の事態が、誰の身に降りかかってもおかしくはありません。
つまり、佐倉市民のだれもが、指定避難所に逃げ込むしかない状況に陥る可能性があるのです。
1.飲料水の備え
以上を前提とし、一つ目は飲料水の備えについて確認と質問をさせていただきます。
現在、佐倉市では39箇所の指定避難所があり、そのすべてにペットボトル等の飲料水の備蓄はありません。他方、避難者の飲料水の確保策として、そのほとんどに防災井戸が設置されています。
しかしながら、印南小学校、臼井小学校、内郷小学校、根郷小学校、4箇所の防災井戸の水は、飲料に適さない、つまり飲めない水です。また佐倉小学校には、そもそも防災井戸がない、という状況です。
この5つの指定避難所については、災害時水道が止まった場合、飲み水がないという状況に陥ります。
72時間の壁、という言葉があります。この時間は、人間が飲まず食わずで生きられる限界の時間をあらわしています。また、72時間を待たず、2日、つまり48時間水を飲まなければ、体力のある大人でも失神状態になるそうです。
これが、体力がない高齢者や子供だったら、あるいは激甚災害が猛暑に発生したら、と考えると、2日間をまたずして多くの被災者が亡くなる可能性もあります。
そこで質問します。
- 上記5つの指定避難所のそれぞれで、激甚災害の折どれだけの人数の収容があると想定しているか。
- 現在、佐倉市では給水車が3台あるが、1台あたり運べる飲料水の総量はどれくらいか。
- 給水車は、平常時どこにとまっているのか。
- 平常時、給水車は空の状態です。災害時などの給水車の給水は、どこで行われるのか。
- 道路や橋梁の寸断などがあった場合、給水車が飲料水を届けられないケースが考えられる。その際のバックアップ体制はどのようなものを考えているか。
以上5点について伺います。
市長回答
髙橋議員のご質問にお答えいたします。
近年多発しておりますゲリラ豪雨、台風などによる風水害や、近い将来高い確率で起こるであろうと予測される大規模地震から市民の生命及び財産を守るため、防災体制の整備は重要な課題であると認識しております。大規模災害が発生した場合、飲料水の確保は市民の健康管理に直結し、避難所生活を送る上でも重要なことでありますことから、大規模地震等により水道がとまってしまった場合には、防災井戸や給水車、浄水器による浄水によりまして飲料水を供給してまいります。
詳細につきましては担当よりお答えいたします。
以上でございます。
執行部(市役所)回答
【危機管理室長】
市長答弁の補足をさせていただきます。
佐倉市地域防災計画では、避難所生活をされる避難者の数は、市全体で2万1,454人と想定しております。市内39カ所の指定避難所の受け入れ可能人数は、全体で2万4,331人でございまして、ご質問のありました5カ所の避難所の受け入れ可能人数は、佐倉小学校843人、根郷小学校623人、臼井小学校535人、内郷小学校375人、印南小学校407人となっております。
また、飲料水の確保につきましては、給水車等による応急給水、浄水器や災害時の応援協定事業者などによりまして飲料水を確保してまいります。
【上下水道事業管理者】
2つ目以降についてのご質問につきましてお答えいたします。
給水車が1台当たり運べる飲料水の量につきましては、2台が2トンタンク、1台が1.7トンタンクを装備しております。
次に、給水車の駐車位置につきましては、3台とも佐倉市役所の敷地内に駐車してございます。
次に、給水場所につきましては、給水拠点である市内3カ所の浄水場で水の補給をいたします。
最後のご質問のバックアップ体制についてでございますが、橋梁の崩落や道路の寸断により佐倉市の給水車が不足する場合などにつきましては、千葉県水道災害相互応援協定により、県内の水道事業体に給水車の応援を要請することとなります。それでもなお不足する場合につきましては、日本水道協会を通じ、関東地区もしくは日本全国から給水車の応援を得ることとなります。
以上でございます。
高橋コメント
ご答弁ありがとうございました。
人間一人あたりで一日に必要な飲料水は、2~3リットルと言われています。
また、給水車は、避難所の人たちだけでなく、地域住民の飲料水の供給という役割を担います。
飲料水の準備がない避難所が多数ある中、3台で足りるのか、こころもとないものがございます。
また、給水車のすべてが佐倉市役所にある、ということは、万一鹿島橋などの橋梁が瓦解、崩落した場合、西側にある指定避難所への給水が一時的に麻痺する可能性もあります。
バックアップ体制についてうかがいましたが、広域な大震災などの場合、他市の協力がえられない可能性は高くございます。
以上から、最低限先述の5箇所の指定避難所について、飲料水の備蓄は必須です。
災害がいつおきるかわからない以上、できれば今年度の予算にしっかりと盛り込んでいただきたく思いますが、市長の見解をうかがいます。
市長回答
貴重なご意見、ありがとうございます。私もごもっともだと思います。
特に今年度につきまして、根郷小学校につきましては、そのポンプ自体が、私も見に行きましたが、もう落ちてしまったので、その部分は完全に新しくしないとだめな状況だと、私も危機管理室長も判断しております。できるだけ早く、あとの4カ所も使えるように努力してまいります。
以上でございます。
高橋コメント
市長からの力強いご答弁、ありがとうございました。
2.電力の備え
次に、指定避難所の電力の備えに関してうかがいます。
佐倉市は東京のベッドタウンであり、また共働き世帯も多く暮らします。平日に大災害が発生すれば、両親などの保護者は東京にいて、子供たちが佐倉市にいる、というケースも多く発生します。
その場合、連絡手段となるのは各自が持っているスマートフォンや携帯電話です。
他方、佐倉市の指定避難所にあるのは、小型発電機と発電機用のガソリンのみです。この発電機は、もっぱら防災井戸の水の汲み上げのためにあるため、指定避難所に逃げ込んだ人のスマートフォン等の充電には使えません。
こうなると、電力が供給されなくなった場合、家族との連絡手段が断たれ、最悪の場合何の情報も入らない状況が続くことになります。
また何より、外灯は完全に機能しなくなるため、夜は闇の中での生活を強いられることになります。そうなると、懐中電灯の数が限られている中、夜中にトイレにすらいけなくなる状況になるわけです。
事実、東日本大震災の被災地である仙台市では、その教訓を生かし、196すべての指定避難所に太陽光発電設備を導入しました。被災地である仙台市の決断は、巨大地震がせまる佐倉市にとって、重大なものといえます。
また、未だ記憶に新しい2016年4月14日、熊本県と大分県で相次いで発生したいわゆる熊本地震でも、太陽光発電はおおいに役立っていました。
熊本県教育委員会がまとめた「避難所となった学校における施設面の課題等について」という資料で、『「停電時には自立運転機能等を備えた太陽光発電設備が役に立った」との回答が多かった』と記載されており、後のページで太陽光利用LED照明が写真付きで紹介されています。
繰り返しになりますが、佐倉市の避難所にある「発電機1台」は、先のとおりもっぱら井戸水のくみ上げ用に使われる電源ですから、もし停電が発生したら、夜は明かりもなく、家族とも一切連絡がつかない、外部と完全に遮断された状況が、長ければ1週間続くことになります。
そこで質問です。
- 佐倉市では、指定避難所に太陽光発電など、自然エネルギーを利用した発電設備を設置する計画はあるか?
執行部(市役所)回答
【危機管理室長】
現在佐倉市では、指定避難所における太陽光発電システムの計画はございませんが、災害時において電力を確保するためには有効な設備であると考えます。指定避難所に配備している発電機では燃料の備蓄量にも限りがあるため、災害時の協力団体と災害時における燃料等の供給協力に関する協定を結んでいるところでございますが、今後、夜間の照明や携帯電話等の電源を確保するため、太陽光など自然エネルギーを利用した発電機器等の配備につきまして関係所属と協議してまいります。
以上でございます。
高橋コメント
ご答弁ありがとうございます。
佐倉市の実情にあわせた発電設備の拡充は必須と考えます。
参考に、私が調査した事例【PDF:323KB】を1つ紹介します。
お手元の資料のとおり、USB電源付き ソーラーLED外灯のスペックと費用についてです。
こちらは、太陽光電源を使った外灯ですから、設置された指定避難所の平常時の防災照明としても役立ちます。
また、災害時などでは、スマートフォン300台分の電力を蓄電可能であり、かつ外灯分の電力とUSB電源のバッテリーが分離しているため、仮にスマートフォンの充電用バッテリーが空になっても、外灯機能が失われることはありません。
このような外灯を、防災井戸、仮設トイレなどの付近に設置することにより、夜の避難所の最低限の照明と、避難者のスマートフォン、携帯電話などの充電が可能となります。また、この設備に防災カメラを付ければ、一石三鳥かもしれません。
予算も、複数設置ならばメーカーの卸値はこれより低額となるため、地元の施工業者の工事費を考えても、ここにある金額規模で設置可能であるようです。
この製品に限らず、佐倉市にとって用途、規模的な意味で最適な避難所の照明と充電設備の設置は、必須であると考えます。ぜひ、ご検討をお願いします。
3.財政の備えについて
次に、財政の備えについて、これはお願いとなります。
平成30年度末、災害時などの不測の事態のためのストックである財政調整基金、いわゆる財調の佐倉市の残高は約55億円でした。決算でどのような金額になるかを見守りたいところですが、平成27年度以降の財調は、決算ベースで27年度85億円、28年度83億円、29年度57億円と、減少し続けています。
さて、財団法人ひょうご震災記念21世紀研究機構がまとめた研究報告書では、阪神淡路大震災に被災した芦屋市の震災後の財政事例を紹介しています。
詳細な説明は割愛しますが、芦屋市では震災の翌年に、経常収支比率は100%を超え、急激な財政の硬直化が進行することになります。
負担の内訳をみると、震災復旧事業による財政負担は、約65億円程度、公営住宅建設事業など復興にかかる分では約190億円となっています。
こうした事業実施のため、芦屋市では830億円もの地方債を発行することになり、2019年現在でも、財政状況は完全に立ち直ったとは言い難いものがあります。
芦屋市については、震災前までは普通交付税の不交付団体、つまり、財政状態はすこぶるよい地方自治体であったわけです。
また、人口規模でいうと、震災前の段階では約8万5,000人。佐倉市のちょうど半分程度の人口でした。
翻って佐倉市をみるとき、巨大な激甚災害に対する財政的な備えがどうあるべきか、という視点をもって、財調の使い方を考えていただきたいと思います。
本格的な地方分権社会とは、裏を返せば「財政についても、地方自治体で責任をもつ」社会であるともいえます。夕張市の例をひくまでもなく、財政が破綻する可能性は、どの基礎自治体にもあります。
大規模災害に備えて、民間保険に加入する基礎自治体も増えてきている、というニュースも、本年6月4日の読売新聞の夕刊1面に掲載されていました。
これまでのやり方以外にも視野を広げた、財政的な危機分散の方法をご検討いただきたいと考えます。
4.実践的防災訓練
次に、実践的な防災訓練についてうかがいます。
私が所属しております江原台自治会では、毎年防災訓練を実施しており、市役所、消防など各機関から協力をいただいているところです。
共助体制の構築、地震体験、緊急時の蘇生術、自治会員による炊き出し訓練とその試食、など、とても参考になる訓練です。
他方、会場は江原台の公園にて実施されます。万一の際、たとえば私の住む江原台地区の住民は、公園ではなく、印南小学校、あるいは臼井中学校が、逃げ込む先の避難所となります。
また、特に印南小学校については、角来の一部、江原新田、江原、第二江原、江原台の住民は、狭く急な坂道を下る必要があり、高齢者や足の不自由な方が徒歩で逃げ込むには困難を極める立地です。
さらにこの坂道は、北側に急峻な崖を背負っているため、そもそも震災などの折にがけ崩れが発生する可能性も高くあります。印南小学校が指定避難所として適切かどうか、さらにいえば、小学校の立地として適切かどうか、という点ついては、大きな課題であることを指摘しておきます。
いずれにしましても、佐倉市の指定避難所についてはどこでも、多数の自治会の人たちが、ひとつの避難所に逃げ込むことになります。
また、災害は季節を選びません。猛暑、あるいは厳冬に発生することも十分ありえます。
千葉市稲毛区では、実際に避難所での実践的な訓練を、あえて真冬に行ったそうです。
その際、多くの参加者は寒さに耐え切れず帰宅した、と聞き及んでいます。そこから、寒い冬に災害が発生したときの備えの重要性を感じ取った市民の方々が、積極的に防災の備えを拡充したそうです。
また、訓練では、食事・水の配給方法、トイレ、寝る場所の確保など、運営方法の学びや多くの課題も見つけることができたと聞いております。
実践的な訓練は、学校区での訓練となり、複数自治会によるものとなるため、ある程度行政の旗振りが必要ではないかと思います。
そこで質問です。
- 今後実践的な防災訓練を実施していく予定があるか、ご教示ください。
執行部(市役所)回答
【危機管理室長】
市民一人一人が災害に備え認識を深め、いざというときの迅速な対応には、実践的な訓練が減災対策を進める上で非常に有効なことであると考えます。佐倉市主催の市民防災訓練では、周辺の自治会が中心となりまして、住民参加型の炊き出し訓練や応急救護訓練、段ボールベッド、マンホールトイレの組み立てなど実践的な避難所運営訓練を行っております。また、複数の自治会や自主防災組織が合同で実践的な避難所運営訓練を行っている地域もございまして、市といたしましても職員を派遣いたしまして、防災講話のほか地震体験車による擬似体験、避難所運営訓練などの支援を行っているところでございます。今後もこのような実践的な訓練が市内で広がっていきますよう活動の支援に努めてまいります。
以上でございます。
高橋コメント
ありがとうございました。
今後、指定避難所での実践的訓練を推進していく姿勢につきうかがいました。
ご答弁を聞きながら、自治会や小学校区単位での自発的な訓練への意欲なしにはできない施策であろうと、あらためて考えさせられました。
他方、冒頭のとおり、自治体の使命は「市民の命を守ること」である以上、やはり「実践的な訓練」の重要性の広報と、訓練の基本的な流れや抑えていなければいけないポイントなどを、公開していくような方策を実施していただけるようお願いします。
先日、室長からいただいた東日本大震災の折の「釜石の奇跡」は、日ごろの津波に対する地道な訓練により、市内の小・中学生、ほぼ全員が津波の難を逃れたケースについて、でありました。お考えのとおり、この件は「奇跡」ではなくて、市や学校、市民が共同で積み上げてきた知見や努力による「実績」であるということ、大変共感するものがございました。
限られた職員数にて、ご苦労かと存じますが、引き続き訓練のバックアップと広報の件、よろしくお願いいたします。
二つ目の質問「【2019年6月26日】一般質問:高齢者ドライバーについて(Uberと民間活力をもとにしたライドシェア施策の提案)」はこちらをご覧ください。
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