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佐倉市コロナ交付金問題:類似事案を発生させないための方策の検討

◆目次
佐倉市コロナ交付金の手続き上のミスに係る損失と経緯の報告
2022年3月28日:佐倉市コロナ交付金の手続き上のミスに係る損失に関する議会討論原稿の公開


先の二本の論考では、佐倉市におけるコロナ交付金の繰越処理の不手際により、約4億2500万円の財政的損失が発生した経緯と、議会における私の討論を掲載しました。

本論考では、このミスが発生し、結果佐倉市の財政損失を出してしまうことになった原因と、その対策について考えていきます。

◆人的ミスは必ず発生するという出発点

ミスをしない人はいません。人が業務にあたる以上、必ずミスは発生します。本件のような事故を発生させないためには、「人的ミスは必ず発生する」という前提にたったうえで、組織の在り様や業務の細部を検討していく必要があります。

1.執行部の緩み

今回の問題の発生原因は、市役所という組織自体の緩みが考えられます。

先に掲載した私の討論原稿にもありましたが、執行部から議会への報告資料で
「千葉県において当該繰越明許費に係る翌年度にわたる債務の負担に要する手続がなされていないことが判明し、対象事業に充当できない額が生じた」
と、読み方によっては「責任は千葉県にあって佐倉市にはない」ともとれる表現をしています。この意識こそ、私は佐倉市役所執行部における気の緩みや甘えの現れであると考えました。

議会への報告資料は、市民に対する報告と同義です。内容は担当部門が作成し、最後には市長がその内容を決済します。担当部門の長をはじめ、西田市長には、その点猛省し、執行部内の意識の引き締めを要望します。

2.事務上の問題点と対策

行政は、税金、交付金や補助金、年金や福祉情報と紐づく個人情報といった、大きな事故につながる可能性を秘めた情報を日々の業務で使用しています。

他方、「そのような情報を扱っている状態」が常となると、誰であっても「慣れ」からくる油断が発生することになります。今回の担当者にかかわらず、「本来稟議を通すべき重要書類を担当者ベースで書き換え執行する」というような危険な行為は、佐倉市役所内で恒常的に実施されていたものと考えています。

その問題は、「重大な事故につながる業務」と「通常業務」が混在する日常において、「重大な事故につながる業務」の扱いが、「通常業務」に徐々に近接してゆき、場合によっては同列に扱われてしまうことから発生する「緩み」と考えられます。

そこで、まずは「重大な事故につながる業務(以下「厳重管理業務」とする)」を、佐倉市内部で洗い出す必要があると考えます。

例えば今回のような「国や県の補助金、交付金の申請」に関する事務も、厳重管理業務に仕分けされるはずです。他方、厳重管理業務以外については、業務管理にそこまでの厳密性を求めるべきではないでしょう。それらは、現場での運用をもとに、濃淡をつける必要があります。「すべての業務にあまねく厳密性を求める」フローを作ってしまうと、かえってその厳密性は薄まり、実効性も低下するうえ、業務効率だけが落ちるという結果になるはずです。

さて、業務区分の仕分けが完了したら、厳重管理業務については、稟議をはじめとする「複数の目」によるチェック体制を構築することが必要です。また、それらチェックも通り一遍のものではなく、実効性を担保する仕組みが必要でしょう。

なお、3月28日の臨時会全員協議会では、執行部から口頭で以下のような改善を検討している、という回答がありました。あくまで現時点での回答なので、今後さらにブラッシュアップされるものと考えます。以下表現は、執行部答弁をもとに私の言葉にしています。

  • 書類作成については、担当者で完結せず複数人の目を通すフローを作る
  • 仕事を一人の担当者に集中させない
  • 稟議済み文書の修正については、修正後必ず再稟議を通す
  • 県などの外部者とのメール連絡には、必ず上司にCCを入れる
  • 県などの外部者とのメール連絡で、厳重管理業務に係る修正等について指摘されたときには、認識の齟齬が発生しないようにメールで内容の確認をとったうえで業務を進める
  • 上司に対する報告について、「だと思う」といった報告者の主観や思い込みがみとめられる場合は、事実を確定させるよう確認する

上記内容については、確定次第報告するよう求めましたので、報告があり次第公表したいと思います。

3.事故未満の事案の共有とその継続

なお、私としては、上記のような「失敗しない業務体制の構築」以外に、「事故未満の事案」が発生したときに、執行部内部で内容を共有する仕組みの導入も必要ではないかと考えています。それができると、業務ミスによる重大事故は各段に少なくなるはずです。

それを証明しようとするときに引き合いに出される理論が、ハーバート・ウィリアム・ハインリッヒが提唱したハインリッヒの法則です。この理論では、1件の重大事故の背後には29件の軽微な事故があり、さらにその背後には300件の「ヒヤリとする」「ハッとする」事故未満の事案が存在する、とされています。

このような「未満事案」の情報共有は、業務負荷を極力排除し「サッとできる」方法の検討が必要です。また、共有する側からすれば、自分の失敗を共有せざるを得ないようなシーンも多くなりますので、仕組みはあっても誰も実施しないという運用になりがちです。そのため、「未満事案」情報を共有することが、評価につながるような仕組みとするべきでしょう。おそらく、このような仕組みについては、調べれば他自治体で導入されているものがあるはずですので、ぜひ研究し、検討してもらいたいと思います。

以上が、本件に関する私の提言ですが、さらに「こうあるべきだ」というご意見があれば、ぜひお聞かせいただきたいと思います。

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