- 2022.11.14
佐倉市職員の「持ち家手当」⑥「効果のない手当」である理由
本稿では、佐倉市執行部があげている「持ち家手当」復活理由をもとに、その問題点を指摘します。
今回は、執行部が議案説明としてあげている「佐倉市内に住む市職員を増やして、災害時に職員が素早く集まれるようにするための条例改定」という理由について、「佐倉市内に住む市職員を増やす」という目的で持ち家手当を増設しても、効果がないことが証明されている、という点について説明します。
(前回:佐倉市職員の「持ち家手当」復活条例とその周辺の課題⑤)
月額3,000円の手当では効果がないという結論
そもそも、自分の家を持つことができるほど金銭的に余裕がある公務員が、月額3,000円の手当で「それでは佐倉市に住もう」とはなりません。
これは感覚で言っているのではなく、「持ち家手当を復活させた市町村」のすべてに直接ヒアリングを入れた結果をもとに断言しています。
平成21年の持ち家手当廃止に関する総務省通達以降、持ち家手当を復活させた市町は2つあります。その2つの市町から「持ち家手当により市内持ち家が増えたというデータはない」と言い切られました。
また、現在変則的な住居手当の加算措置を実施している尼崎市についていえば、市内居住促進のため、佐倉市の倍額の月額6,000円で市内持ち家手当を継続しましたが、効果が無かったという結論に至り、以降「新規市内転入職員」に的を絞った居住促進策に切り替えています。
私が付託時質疑の際に「新規市内転入職員に絞った制度か?」と聞いたのはそのことが念頭にあったからですが、執行部は「今現在佐倉市に持ち家を持っている職員にも付与する手当」である旨答弁しました。
2022年9月5日:付託時質疑【開始後2分32秒から】
今回私が驚いたのは、執行部が以上のような「他市の事例とその効果」を調べることなく議案を上程してきたことについてです。執行部は、他市の担当者に政策の効果について詳細なヒアリングを入れるのは失礼にあたるので調査しなかった、と説明しておりましたが、尼崎市の「6,000円でも効果なし」という結論はWEBの公開資料に書かれています。
面白いのは、手当の効果を訴えるべき職員組合が「たかが 6,000 円の差で市内への転入の効果を期待することが間違いである。」と喝破していることです。この件に関する限り、完全に同意します。(PDF資料:尼崎市職員労働組合との交渉状況)
仮に、百歩譲って尼崎市の事例が見つけられない中、月額3,000円の持ち家手当で「市内に持ち家を持つ職員が増えるかも」と考えたとします(十分な給与を得ている市職員でそのように考える者がいるとは、にわかには信じがたいですが)。その場合、私なら何をするかといえば、現在市外に住んでいる職員に対して、「市内に住まない理由」の匿名のアンケートをとります。
その結果例えば、市外に住む親の介護のためであったり、配偶者が東京の早朝勤務であるため東京近くに住まざるをえないであったりという「やむを得ない理由」が大勢を占めた場合、月額3,000円の手当では佐倉市に持ち家を持つきっかけにはならないことに気づくはずです。しかし、執行部はそのようなアンケートすらとっていないことが、付託時質疑における市民ネットワーク川口議員の質問から明らかになりました。
2022年9月5日:付託時質疑【開始後5分14秒から】
これで、何を審議しろというのでしょうか?
思うに、このように必要な調査すらなされていない条例案が平気で上程されるのは、もうすでにおなじみとなっている「さくら会議員団(最大会派さくら会と賛否をともにする公明党、自由民主佐倉から構成される18名の議員団)」が賛成してくれる、という執行部の「議会とのもたれ合い体質」が完全に定着しているから、と考えています。
総務常任委員会で、委員であるさくら会の敷根議員が、「(持ち家手当の復活といった)先行事例を作って頭角を現すのは大切だ」と言っていました。敷根議員にお伝えしたいのは、これは「先行事例」ではなく、かつて廃止した制度を国の通達に逆らって復活させる「逆行事例」であり、またすでに他市町で復活させた結果効果がなかったことが証明されている以上、どういう理屈で佐倉市だけが「頭角を現す」ことができるのか根拠を示す必要がある、という点です。
以上で、そもそも執行部があげてきている根本的な効果が否定されたことで、その他の説明をする必要はなくなりましたが、次回も引き続き提案理由の問題点を指摘します。
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