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型枠政治の事例② 産廃不法投棄にからむ建築契約の「説明なき可決」

【型枠政治シリーズ原稿】
保守や革新といった「型枠政治」で思考停止に陥る地方議会
型枠政治の事例①コロナ禍による議員報酬削減案を佐倉市議会主要会派が「黙殺」
型枠政治の事例② 産廃不法投棄にからむ建築契約の「説明なき可決」
Twitterのご意見に対する回答:産廃不法投棄にからむ建築契約の「説明なき可決」


佐倉市議会の9月定例会における「型枠政治」の典型事例の二つ目を紹介する。こちらもやはり、主要会派17名による、約18億6700万円の建築契約に関する、「説明なき議決」の事例だ。

私には、この事案も「議会の多数を確保し役所に権力をふるうための型枠」を使った、議会政治の惨状に見える。

背景

佐倉市では、市内に3つある図書館のうちの一つが老朽化したことに伴い、現在図書館がある場所のはす向かいに、新しい図書館の建設事業が進行中だ。

当該図書館については、これまでも「別の場所に建てるべき」や、「そもそも建てるべきではない」など、市民や議員の間でも様々な議論のある事業であった。

私としては、本事業についてははじめから「賛成」の立場を貫いており、建築工事の契約も問題なく進むことを願っていた。

さて、今回の議会では、この「新しい図書館」について、約18億6700万円で建築工事を落札した前田建設工業との「契約の是非」が検討された。

通常であれば、入札手続きを経て落札した事業者と、議会による議決で速やかに契約を締結することになる。

しかし今回は、落札が決定した後に、前田建設による「石膏ボード不法投棄」問題が一斉に報道されたことから、図らずも今定例会の「最大の懸案事項」になってしまった。

不法投棄問題の概要

ここでは、前田建設による「石膏ボード不法投棄」問題について、佐倉市議会9月定例会の最終日である9月14日の議決前に、佐倉市議会議員が報道により知りえた状況を簡単にお伝えする。

2004年頃、前田建設が施工した学校の壁から、産業廃棄物である大量の石膏ボードが埋め込まれていたことが発覚した。この石膏ボードは、一定の環境下では有害物質である硫化水素が発生する恐れがあるとする報道もあり、事態を重く見た施主側は、前田建設を相手に撤去費用として50億円を請求した。また、一部専門家が、「不法投棄が他の工事施設でも行われていた可能性は否定できない」と指摘する報道も見られた。

このような状況を受け、この学校が所在する石川県が、本事案について調査に乗り出した。

(参考報道)
学校壁内不法投棄問題 石川県が調査に乗り出す 処分費めぐり訴訟も(9月7日:産経新聞)

校舎壁 穴を空けたら石膏ボード 学校側が撤去費要求(9月10日:朝日新聞)

市民の最善をなすべき「最後の砦」である議会での検討状況

以上を前提に、9月14日佐倉市議会最終日に、「佐倉市と前田建設は速やかに契約を締結すべきか」を検討した。

私としては、上記の状況下において、前田建設と「速やかに」契約締結をすることには「慎重になるべき」として、議決時には反対した。

理由は、一言でいえば「報道内容を前提とすると、前田建設が、佐倉市の図書館をしっかり完成させることができると判断できる材料がない」ためだ。

姉歯事件の例を引くまでもなく、建築不正事件は、一件の問題発覚以降「芋づる式」に他の不正が明るみに出ることが少なくない。仮に同様の問題が今後5件見つかったとすると、単純計算で「50億円×5件=250億円」の請求が、前田建設相手に立つ可能性がある。そのような報道が加熱した場合、準大手とはいえ前田建設が耐えきれるのか、私には判断ができなかった。

例えば、契約をする前に、当時同社が手掛けた他の物件について、同様の「産廃不法投棄事案」がなかったか調査結果を提出させるなど、「判断材料を入手する努力」を十分に果たすべきだと考えた。

さらに、本件が発覚した後、前田建設は「石膏ボードを埋め込むのは、施主の了解のもとで行ったこと」などと述べており、事実認定について施主との争いが生じている。そのような会社に大切な佐倉市の図書館の建設を任せることができるのか、という議論もある。仮に施主とどのような約束があったにせよ、危険な産業廃棄物を建築物に埋め込むことは、行政指導の対象となる行為であり、公序良俗に反する。本件について、前田建設の対応を、もう少し時間をかけて見極める必要があるとも考えた。

以上の点を私なりに整理し、執行部に不明点を質疑し、そのように討論も行った。

佐倉市議会録画放映 (議場における討論:47分20秒から約3分)

「議員17名の型枠」による議決結果

本事案について、本会議の議決の前に仔細に検討する役割を担っている「総務常任委員会」において本件が検討された。当該委員会では、市民ネットワークの川口議員と私以外、本件について執行部に質問する議員はいなかった。

また当該委員会の討論においては、「速やかな契約」に反対する理由を述べた私の討論以外、何の意見もだされずに終わった。結果、総務常任委員会では、前田建設との「速やかな契約」が可決された。当該契約に「反対」の立場をとったのは、先述の川口議員と私の2名のみだった。

その後行われた本会議の場においても、佐倉市議会全28名の議員中、「さくら会、公明党、自由民主さくら」の所属議員17名により、討論においてなんの説明もないままに「契約問題なし」とされ、佐倉市議会の議決によって、当該契約議案が可決した。

これをもって、前田建設と佐倉市の契約は法的に認められた。いったいどの議員が、この契約が問題ないことを市民にしっかり説明できるのか、私にはわからない。

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