- 2021.09.20
「委員会等の動画公開」に反対する議員のご意見:2020年12月9日佐倉市議会議会運営委員会
佐倉市議会で「委員会等の動画公開について」審議された内容を、「動画公開に反対」あるいは「きわめて後ろ向き」な議員の発言に絞って、会派名・議員名と私のコメントつきで公開します。
この議論は、市民の方から「常任委員会等のインターネットによるライブ中継及び録画中継の配信を求める請願書」が提出されたことを受け、議会運営委員会の委員によりなされたものです。なお、以下で紹介する議員は全員、議会の現場で本請願に「反対」しております。
本請願書は私が紹介議員となり議会に提出したものですが、佐倉市議会の場合、無会派議員は議会運営委員会の委員にはなれませんので、残念ながら私からの発言は一切ありません。以下、その会議の全文議事録ですので、ご興味のある方はご一読ください。
「委員会等の動画公開」に反対する議員のご意見
※以下議員発言の太字は筆者によります。
◆さくら会 岡野議員
岡野です。私は、開かれた議会というのは大切な考え方で、やっていかなければいけないことだと思っております。ただ、今のメリット、デメリットを両方考えていくと、比較検討していく必要があるのではないかなと思っております。一体どのくらいの方が閲覧しているのかちょっと分からないので、私の耳にはあまり入ってこないのです、ネット中継のことが。開かれた議会にするにはどうしたらいいかというのは、何もインターネットばっかりではないのではないかなと思います。いろんなやり方があると思います。今年はコロナで中止になりましたけれども、意見交換とか、そういうものもありますし、いろいろなやり方がありますので、やはり総合的に比較検討して判断していく必要があるのではないかな。私は、ちょっと時期尚早ではないかなと思っております。県内でもまだ9市議会というのは、なぜなのかなと思っております。ただ、いずれ時代の流れの中で、そういうときが来るのかなとは思っております。
◇髙橋コメント
岡野議員は、委員会等の動画公開について、メリット、デメリットの議論を提起しています。他方、ご発言の中では、「動画公開」に関する岡野議員が考えるデメリットがわかりませんでした。
私たちが動画公開をすべきと言っているのは、市民が閲覧したい議論が議会でなされているときに、閲覧できないという状況が問題だという課題意識からです。
ある期間の閲覧数が少ないからメリットが少ない、ということではなく、例えば議会基本条例にもある「志津霊園問題」的な不祥事や、議員や職員の不正行為が疑われる際の百条委員会などが発生した場合、市民の感心は高くなることは自明です。そういう議論をリアルタイムに、あるいは市民が観たい時間に、しっかり公開していくことが地方自治法や議会基本条例で言うところの議会の本義です。
さらに、例えば今後市の財政がさらに厳しくなっていく中で、小中学校の統廃合などが議会審議されることになると予想されますが、そういった議論は「小中学生の子を持つ保護者」は関心が高い議案ですが、それ以外の層には関心が低いため、グロスの閲覧数は「大したことはない数字」に落ち着きます。つまり、市議会のほとんどの審議は、「議案にかかわりがある一部市民にとって重要なもの」という性質を持つことは自明です。
以上のように、私たち議員や執行部にとって「都合の悪い」議論や、福祉政策や小中学校の統廃合といった「少数にせよ市民生活に直結する議論」がなされているときこそ、市民の代表たる議員がどのような審議をしているのか、透明性を確保すべきなのです。
また原理原則として、議会基本条例の前文、第3条、第6条に記載の公開原則に反する常態は、早急に解消する必要があると考えます。
◆さくら会 密本議員
密本議員(サマリ)
委員会等を動画公開するために予想されるコストはどの程度か。
議会事務局答弁(サマリ)
あくまで仮の見積として
イニシャルコスト:カメラとパソコンで約180万円。
ランニングコスト:映像保管、映像の加工にかかる経費が年間72万円。
ちなみに、本会議の中継に今年間約72万円かかっている。
密本議員
今年間経常経費として本会議で72万円かかっているところにプラスもう72万円、毎年かかってくると。そうしますと、144万円の経常経費が毎年かかってくると。かなり大きな額にはなると思うのですけれども、これ見ていらっしゃる方というのは、どのぐらい果たしていらっしゃるのかと、費用対効果が非常に重要かなと思いますが、数字は出ているのでしょうか。
議会事務局答弁(サマリ)
令和2年1月から11月末までの
録画・VODの視聴者数、アクセス数:1日当たり約10件、総数3,594件
ライブ中継:1日当たり約20件、総数398件
ただし、以上の数字は佐倉市役所からのアクセスも含まれているため、市民からのアクセスに限定するともっと少なくなることが予想される。
密本議員
そうしますと、1日当たり庁舎内を含めて20件という数に経常経費144万円ということになりますと、相当高くコストがつくのかなと思われます。先ほど岡野委員も言いましたけれども、今後もっとICTが広がっていく中で、ライブ中継ということも考えられるかと思いますけれども、今現在の状況を聞いておりますと、まだ少し早いのかなという印象を受けました。
◇髙橋コメント
委員会等の会議体の動画公開に予算をかけない手法は、他市町村で多数実施され、継続しています。
簡単に説明すると、①動画撮影のカメラを委員会室に設置し、②既存のWi-Fiで動画をYouTubeで公開し、③当該動画をそのままYouTubeのストレージに納める、という手法でいえば、ランニングコストは0円です。
詳細は2年半前の私の論考をご参照ください。
市議会議員の本気の討議「各種委員会」の動画公開が急がれる、という話
予算の最適化を検討すべき議員が、職員から説明があった「これまでの手法を継承した場合のコスト」だけで「コストが高いからまだ早い」という結論を、議会の会議の席で述べるのはいかがなものかと思います。まさに、こういう発言する議員がいるということをしっかり市民にご覧いただくために、動画公開が必要だと考えます。
さらに言えば、現在公開されている本会議の閲覧数が低いのが問題である、という課題意識があるのであれば、どうすれば閲覧数があがるか、しっかり検討して対策するのが議員の務めではないでしょうか。例えば、密本議員は一度でも、自分の公式サイトやTwitterで、ネットで公開されている動画にリンクをはったことがありますか?そのような努力をしないで、「1日あたり20件の閲覧数は少なすぎるから、動画公開はまだ少し早い」というのは、あまりに短慮だと言わざるを得ません。
◆自由民主佐倉 齋藤議員
開かれた議会という意味合いでは、非常にいいことだと私も認識はしております。また、このインターネット配信だけにとらわれず、恐らく中途になっている懸案事項がほかにもあるかと思いますので、その辺も含めながら、タブレットの導入等とか、いろいろな意見を集約しながら進めていくのが一番いいのかなと思いまして、このインターネット配信だけにとらわれることなく委員会を進めていけばいいのかなというふうに考えております。
◇髙橋コメント
多角的な議論をすることには賛成です。齋藤議員がおっしゃっているように、議会改革に関する懸案事項は、それこそ山ほどあるという認識です。
にもかかわらず、現在の議員構成になって以降一回も「議会改革推進委員会」が開催されていないという状況は大きな問題だという認識です。この状況は、すでに2年半議会改革に後ろ向きだった議長により、佐倉市議会が運用されていたという証左です。
また、動画公開に関しては、「その他の議論があるから動画公開を後回しにする」、という言い訳のためにたくさんの議論を提起し、結果「何も審議しないで時間切れ」という運営をすることだけは、是非避けていただきたいと考えています。
なお、この時齋藤議員は本請願に反対しています。「その他案件も含めながら」議論することに賛意を表しているのに、なぜ請願に反対するのでしょうか?
おそらく、今回の私たち無会派議員の提起により、「議会改革推進委員会」は今年度中に開催されるでしょう。その折は、ぜひ本件もしっかり審議していただきたいと考えます。
◆さくら会 爲田議員(この発言時には議長)
前略)議会だよりやインターネット中継、ケーブルテレビの放映に係る議会広報事業は、令和2年度当初予算で申し上げますと総額1,027万5,000円でございます。前年からの災害復旧、さらには新型コロナウイルス感染対策に要する経費で非常に厳しい財政状況にある中、この常任委員会等のインターネット中継のみを対象とした議論では不十分であり、費用対効果など、総合的に評価した上で議会広報、ひいては佐倉市議会の運営の在り方等も含め、決定していくべきと考えております。
私といたしましては、本定例会最終日に開催予定の会派代表者会議において、各会派代表者に報告の上、以上申し上げました事項について、議会改革推進委員会に諮問し、議論していただこうと予定しているところでございます。
◇髙橋コメント
費用に関しては、上段の密本議員の発言に対するコメントで既に意見を述べましたのでここでは差し控えます。なお、爲田議員はこの時議長であったため、この議会では本請願に対する賛否は表明しておりませんが、爲田議員が所属するさくら会は全員「請願に反対」されております(佐倉市議会の場合、議長は所属会派に席を置いたまま議長となります)。
◆さくら会 高木議員
事務局からの説明がありました平成28年、29年の議論なのですけれども、当時私もそこに加わっていたのですけれども、その中でやっぱりしっかりとした議論をした上で運用ルールを明確にするというところが非常に大事であって、私の感想というか、最近の議会を見ていての感想なのですけれども、私も文教福祉常任委員会の委員長をさせていただいているのですけれども、委員会の中で委員長が許可をしていない発言ですとか、やはり本会議でも見受けられるのですけれども、不適切な発言なども最近やはり見られるというところで、その辺我々議員としても考えることがあるのではないかなと思いますので、もちろん開かれた議会という部分でいろいろな議会の仕組みを進めるのもいいのですけれども、先ほど宇田委員からも発言あったのですけれども、議員として発言するに当たってもそうなのですけれども、様々なものを計算していかないといけないと思いますので、今ここで要望は出ていますけれども、今の段階では、本会議、委員会の状況を見ていると、容易には賛成できないというのが私の意見です。
◇髙橋コメント
高木議員は、委員会等での不規則発言に対する懸念を指摘しています。
要約すると、①委員会は委員長が発言を許した者のみが発言すべきところ、②委員長が許可していない者が発言することがあり、③それを委員会の公式な議論として公開することは問題だ。
という立論から、現段階では動画公開は反対だ、という結論を導いています。
確かに、高木議員の懸念は慎重に審議すべき事項です。委員会等での不規則発言が、あたかも当該会議体での公式な議論として記録されることの懸念は議論を尽くす必要があります。ちなみに、本件の対策として、動画公開を実施している自治体では「YouTubeで公開している動画は議会の公式な議事録ではない」という前提で実施しているケースも多くあります。そういった不規則発言を、議会の公式な履歴とは認めないが、議会で発生した件であるため「非公式動画」として公開している、という論理構成です。
他方、そのような議論を飛び越えて、高木議員はいきなり「動画公開反対」の意見を開陳している。わたしには、ずいぶん乱暴な意見表明に思えます。
また、高木議員は冒頭「しっかりとした議論をした上で運用ルールを明確にする」ことが大切だ、とおっしゃっています。他方、高木議員もご発言されているとおり、2016年の議会運営委員会において、さくら会の押尾元議員から、「ルールづくりをしっかりすべき」というご発言がありました。
平成28年 8月定例会議会運営委員会
これは、市民の方から「委員会の動画公開についてせめて調査研究を進めてほしい」という要望を、さくら会等が否決した際の議論の中で、さくら会の総意として発言されています。
当時さくら会の所属議員であった高木議員も、当然にその問題意識は共有されていたことと思います。それから、すでに5年以上の歳月が流れました。きっと素晴らしいルールを、さくら会からご提示いただけるものと期待しております。
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