【前編】「岩名陸上競技場」を「小出義雄記念陸上競技場」に名称変更することについて
【前編】「岩名陸上競技場」を「小出義雄記念陸上競技場」に名称変更することについて(本記事)
【後編】「岩名陸上競技場」を「小出義雄記念陸上競技場」に名称変更することについて
【2019年12月4日】一般質問:小出義雄記念陸上競技場と紐づく金メダルジョギングロードについて
少し前の話になりますが、佐倉市の総合運動公園である岩名運動公園内にある「岩名陸上競技場」を、「小出義雄記念陸上競技場」に名称変更することにかかる補正予算が、本年9月議会で可決されました。
本提案については、私は賛成をしました。この名称変更を意味のあるものにするために実施したのが、12月議会での私の「小出義雄記念陸上競技場と紐づく金メダルジョギングロードについて」という一般質問です。
他方、名称変更そのものに反対された議員もおり、また反対理由を明確に述べられているため、最初にその点について私の考えを申し述べます。
■「名称変更先送り」案に対する反論
まずは、本件について9月議会において「反対」の討論を実施し、WEBで意見を公開されている宇田みおこ市議に敬意を表します。
国であれ地方であれ、議会におけるすべての議案について「賛成or反対」の意見表明をせず、淡々と議会で決めてしまっている政治家が多いことが、市民国民の「政治家なんか、誰がやっても同じ」という白けた意識を醸成していることは何度も指摘しているとおりです。
その中にあって、宇田市議がとられた姿勢については、市議会議員の在り方を問うているように私には思えます。
さて、とはいえ私は本件に賛成したので、宇田市議とは逆の立場です。
その理由を申し述べます。
宇田市議は
- 緊急性及び財政面という観点で見た場合、この時期に名称変更するのは適当ではない
- 名称変更に関し、市民協同という観点からみて、パブリックコメントを実施しなかったのは手順として問題だ
の2点において反対の立場をとりました。
他方、宇田市議としては、小出監督の功績には感服、感謝されている。そのため、事業を「中止」ではなく「先送り」すべきだ、という意見です。
まず、「1.」について。「緊急性」ということを言い始めると、文化事業のほぼすべては「緊急性」がないため、この理屈からいえばすべて「先送り」すべきとなります。議会にあがってくる議案は、すべてにおいて市役所内で様々な議論やプロセスを経て綿密に計画されたものであるため、「先送り」という判断は、かえって人的、財政コストを浪費する行為です。
また、本事業の予算はすべて、名称変更に伴う看板等サイン類の整備です。
そのため、「どのサインに」、「どれくらいの」予算投入を想定しているか確認してみます。
まず、表中1の「駅前看板」について。
驚くべきことに、佐倉市の総合運動公園である「岩名運動公園」のサインが、そもそも現状では最寄の駅である京成佐倉駅に設置されていません。
当該運動公園には、陸上競技場の他、「長嶋茂雄記念岩名球場」などの運動施設も立地します。また当該公園では、本件で争点となっている陸上競技場を中心に、毎年「朝日健康マラソン」が開催され、全国各地からランナーが集まることでも知られています。
担当課にヒアリングしたところ、今回の駅前看板はそれらの情報を総合的に掲出するためのものと聞きました。であるならば、私としてはむしろ名称変更しようがしまいが「絶対必要」な案内看板であると考えます (岩名運動公園には その他にプールやテニスコートもありますので、総合案内看板であるならばそれらの情報も掲出されるべきであると考えます)。
また、表中2の競技場名称サインも、現状は競技場の規模にしては相当つつましいサイズのものです。陸上競技場の来場者でも見落とすレベル。これを改め、正面入り口ゲートに大きく名称を掲出する計画とのことで、これも名称変更にかかわらず「必要な措置」と考えます。
理由は簡単で、たとえば、初めて陸上競技場に来た人が、正面入り口ゲートを集合場所にしたとします。しかし、外から見た限りそれが「陸上競技場」なのか判然としない。そんな「来場者にとって不便な状況」は、解消すべきであるからです。
その前提に立つと、以上の二つを除く「インフィールドサイン」と「小出監督顕彰オブジェ」の合計約200万円が、名称変更によってのみ生じた予算となります。名称変更に賛成である私は、特に「小出監督顕彰オブジェ」がどんなものになるのか判然としないものの(センスが悪いものであればやらないほうがいい、という場合もあります)、基本的には賛成です。その理由は、後段で述べます。
また、討論の中で宇田市議が指摘している「本件の予算約560万円は、台風被害者支援に使うべき」という件も、先送りであればそれは「予算の先送り」なだけなので意味はありません。よってここでは仮に「名称変更中止」として、予算約560万円が浮いた場合について考察します。
市の予算で、災害時等想定外の出費に使うべき予算は「財政調整基金」とされています。佐倉市では、本年5月時点の財政調整基金は約55億円程度でした。また、「台風被害者支援に使うべき」予算とは、当然に被害状況、程度、被災者のおかれている収入状況をなどに照らし、綿密な計画や規定を基に市としてできる最大限の予算を投入します。
その際、「名称変更を中止して560万円をねん出できたから、その分を被災者に分配しよう」というような判断は、予算執行の方法論としてもちぐはぐなものになるし、そのような「いびつな予算」の分配方法をめぐっては、公平公正という観点から慎重になるべきであることは言うまでもありません。私は、そのような予算の使い方は、よほどの理由がない限り「政治的なパフォーマンス」になり兼ねない危険な行為だと考えます。
「いや、そうではなくて、560万円をいったん財政調整基金に混ぜ込んで、計画に合わせて使おうという提案だ」という理屈もたちません。もしそうだとすると、その提案は単に財政調整基金を560万円分「使わない」というだけの話で、被災者支援の総額は変わらないからです。
次に、「2.」の「名称変更にはパブリックコメントの実施をすべき」については、宇田市議も引用している「佐倉市市民協働の推進に関する条例」を参照しつつ考察します。
条例の中で見るべき箇所は、この場合「パブリックコメントを実施しなければならない場合の条件」を定めた部分となります。まず、宇田市議が引き合いにあげている「第3章 第7条(3)」は、「条例の制定又は改廃」について言及している部分なので、指摘はあたりません。念のためこのブログでも引用します。
第3章 政策形成過程参加手続 (政策形成過程参加手続の実施)
第7条
(3)次に掲げる条例の制定又は改廃
イ 市の基本的な方針を定める条例
ロ 市民の生活又は事業活動に直接かつ重大な影響を与える条例
ハ 市民に義務を課し、又はその権利を制限する条例
以上のとおり、宇田市議の指摘箇所はすべて「条例の制定又は改廃」の規定なので、「陸上競技場の名称変更」の議論の前提とはなりません。
よって、宇田市議が指摘している箇所以外で、今回の名称変更に該当する規定はないか確認したところ、同条の(4)が唯一議論可能な条項となりそうです。引用すると
(4)市民の生活又は事業活動に大きな影響を及ぼすことが予測される問題等に係る意思決定等
どうでしょうか。陸上競技場の名称変更が、「市民の生活又は事業活動に大きな影響を及ぼすことが予測される問題等」にあたるでしょうか。これが、競技場の規模や設備を大幅に変えるようなものであるならば「市民の生活又は事業活動に大きな影響を及ぼすことが予測される問題」に発展することもあるでしょう。しかし、名称変更であれば少なくとも「大きな影響を及ぼす問題」は起きないはずです。
さらに言うと、本件は当然に「市民によって選ばれた」議員によって、予算執行の是非を審議されています(だから議論になっている)。
以上から、陸上競技場の名称変更は、私としては「絶対的にパブリックコメントをかけなければいけない事業」ではないと考えます。市議会議員のチェックと、市民の皆さまへの報告がしっかりワークしているという前提においていえば、議会にかけることで「絶対必要条件」は満たしています。ただし、本件に関する市民への報告が、とくに本件に賛成した議員からなされているかは甚だ疑問ではあります。
あえて言わせてもらえば、特に行政が提案した施策について反対の議論が議員からあがった場合、選挙により選ばれていない市役所職員は、余程のことがない限り反論できません。
私は、議会でも、委員会でも、総合計画の特別委員会などでも、行政に対して正すべきと考える点については、斟酌なく指摘していることはご存知のことと思いますが、こと自分が賛成する議案については、特に賛否が割れて、かつ市民生活にかかわりが大きな議案については、しっかりその理由を述べるようにしています。
そうしないと、反対の理由だけが際立ってしまうため、事業に対して興味を持ち情報収集する見識のある市民の方々の中で、「なんだか行政がおかしなことやってるぞ」という印象が先行し、「行政をチェックすべき市議会議員は何やってんだ?」という疑念とともに不信感が募ることになる。
議員の仕事は、ただ数の力だけで市の提案事業を通すことではないことを、肝に銘じるべきでしょう。
■名称変更は「佐倉市のためになるのか」が最重要な争点
つきつめていえば、この陸上競技場の名称変更は、一義的には小出監督の功績を語り継ごうとするものですが、同時に「佐倉市のためになるのか」という点こそが、市民の代表たる市議会議員が考えるべきポイントであろうと考えます。
結論から言えば、私は「今後の施策によっては、佐倉市のためになる」と思い、名称変更に賛成しました。
長くなったので原稿を改めます。
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