【執筆書籍の紹介2】「議員の数」を維持し続けることが、市税の使い道として最適なのか?
自著「地方議会議員の選び方」の紹介のため、同書「はじめに」に書いた文章の前半は前回記事をご確認ください。
書籍紹介二回目の今日は、同書「はじめに」の後半を紹介いたします。
議員の「数」について 市税の使い道から制度設計を考える
執筆のための調査を進めるうち芽生えたもう一つの疑問は、議会の予算規模や議員数について、率直に言って「こんなに必要なのか?」ということ。
手元に、佐倉市の平成29年度版「主要施策の成果の説明書」という冊子があります。この冊子には、佐倉市が29年度に実施した事業の概要説明と、当該事業にかかった予算が列挙されています。
その中に、たとえば「シルバー人材センター補助事業」という項目があって、この事業にかかった29年度の予算がちょうど1,000万円と書いてあります。
事業の内容は、公益社団法人佐倉市シルバー人材センターを市が支援することにより、高齢者の能力を活かした就業機会を提供し、就業の拡大と雇用の安定を図ることにある、とあります。この事業により、年間897人の就業実人数を生み出している、という成果報告が書かれています。
この事業にかけた年間予算1,000万円が、ちょうど佐倉市に28人いる市議会議員一人にかかる金額とほぼ同額です。※1
たとえば、現在の議員定数を1名減らして、その分を「シルバー人材センター補助事業」にあてた場合、高齢者の就業者数が大幅に増加するならば「どちらが有効な市税の使い道だろう?」と思わずにはいられません。
「市税の使い道と議員定数」に関する疑問は、佐倉市のみならず、全国の「市民への報告義務」を果たさない、いわゆるうさん臭い地方議会議員を擁するすべての地方自治体への問いでもあります。つまり、大切な役割を果たしていない議員ばかりでも、行政の運営が滞りなく進められているならば、そもそも地方議会議員は二元代表制を担保できるぎりぎりの人数でも十分なのではないか?という問いです。
市議会について実際に内部を知らない以上、裏付けのある必要人数を算出するのは難しいことはわかります。しかし、首長を頂点とした県や市といった執行機関が、長年の議論やノウハウの蓄積をもとに必死に考え抜いた「税の使い道」について、委員会で検討して賛否を表明するだけならば、バランス、公平性、行政の牽制としての役割を保つのに最低限必要な人数--極端に思われる方もいるかもしれませんが、自治体の規模によらず現状の議員定数の半分程度からでも、十分議論の余地はあるのではないでしょうか。
もちろん、市民の声を市政に反映させる大切な役割や、専門性や多様性を担保するには相応の人数が必要だ、という反論もあるでしょう。そこではじめて、「それでは、現在の議員は市民の声を市政に反映することができているのか?」とか「委員会で検討する問題について、現職議員で専門性や多様性を担保できているといえるのか?」といった、冒頭の「議員の質」とセットにした「規模や数の議論」が提起されてくるはずです。
そういった本質的な議論を前提にした、一からの制度設計が、地方分権社会を目前に控えた今、必要なのではないでしょうか。
地方議会議員の「質」や、制度設計を前提とした「数」については、市・県民税を納めている私たちの生活に直接かかわる課題です。
本書をもとに、もしあなたが住む市の市議会について何らかの課題が見つかり、その課題に立ち向かう意思のある候補者に納得の一票を、あなた自身が入れることができたとしたら、それにすぎる喜びはありません。
※1:「1,000万円が、ちょうど佐倉市に28人いる市議会議員一人にかかる金額とほぼ同額」。これは、佐倉市の平成30年度の予算書中、「議員報酬及び活動事業」の総額を、28で割った数字です。同費目の中には、かつての議員年金の支払いのために使っている「共済費」も含まれています。「共済費」は、現役議員に支払う予算ではありませんが、「議員報酬及び活動事業」として仕分けされ、議員制度を維持するために使われている「市税の使い道」であるため、このような表現にしています。
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