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オンラインゲーム利用制限条例論争:良かれと思う規制の短絡さ

本稿を書くにいたった経緯と私の見解

気になっていた表題のニュースについて、ときどき時世などについてざっくばらんに意見交換している方からいただいたメールで、改めて考える機会をいただきました。この方はデザイン会社を経営しており、表現の自由やネットメディアについて鋭い考察力があり、意見交換をする度に様々な気づきを与えてくれます。

その方からいただいたメールを、最後に紹介いたします(本人からの了解はいただいています)。

私の見解をはじめに述べますと、地方自治体が子供のオンラインゲーム等の利用時間制限を設ける「条例化」には反対です。本件について地方自治体が踏み込める範囲は、「オンラインゲーム依存症防止のガイドライン」策定と、啓発活動、相談窓口の設置程度までだと考えます。また、ガイドラインを作るのであれば、地域差があるものでもないので、一義的には国の仕事でしょう。

香川県の条例案は、名称こそ「ネット・ゲーム依存症対策条例(案)」ですが、記事を見る限りオンラインゲームの使用時間を定めた「オンラインゲーム使用時間制限条例」となっています。

「罰則規定のない条例なら大丈夫」という向きもありますが、条例があれば子供たちのネット・オンラインゲームの利用時間を学校に報告するような校則も作りやすくなりますし、違反した履歴がついた学生が進学に不利になったりする可能性もあります。

下段のメールにもあるとおり、一言で「オンラインゲーム」と言っても定義があいまいです。例えば昨今では勉強とゲームの境目が「ほぼ無い」ものが多い。楽しいeラーニングは「オンラインゲーム」なのか? 規制条例がある自治体からeスポーツの選手が出にくくなる状況は正しいと言えるのか?

また例えば、私の知り合いの息子は、オンラインゲームでのコミュニケーションにより英語をマスターしています。オフラインで外国の人とコミュニケーションをとる課外活動をすることは評価されるけれど、オンラインゲームの場合時間制限が課される理由はどこにあるのか?

日々進化していくオンラインゲームから、現在に生きる子供たちが、次の世代を生き抜くために何を学んでいるのかしっかりした定見もないままに「自治体による自由の制限」議論が走ってしまうのは、危険であると考えます。

ちょっと横道にそれますが…

この事例は、「自治体ごとの自主性」を前提とした地方分権社会の在り様の一つです。もちろん、以前から条例制定権は自治体にありましたが、権利関係が国から地方へ移譲されていく今後、自治体ごとに特徴ある条例が次々に打ち出されていくことが予想されます。

そんな背景があるにもかかわらず、首長や地方議会議員選挙の投票率が下がり続けている現状の日本の在り様は実に恐ろしいのですが、いかんせんこのような論考を読んでくれるのは、皆すでに「常に投票をしている層」であるという皮肉。

「投票しない層」の皆さまに、この状態を伝えるには、何をすればいいのか日々考えています。

以下、いただいたメールです。

そういえば気になったニュースがありました。

オンラインゲームに時間制限 香川県、依存防止へ条例案(日経)

香川県の条例が発表された際、賛否両論が巻き起こりましたが、当然のことながら

「スマホ普及によるネット依存拡大も全国的な社会問題だ。厚生労働省研究班の推計によると、依存の疑いがある中高生は17年度時点で約93万人と、12年度の調査と比べて倍近くに増えている。その中で中高生は全体の約14%を占める。」

っていうもっともらしい主張の前には、この条例への反対意見はそのうち

「では子供たちがゲーム依存になってもいいって事なんですか!」

という「正しい声」の前に崩れ去るでしょう。

たぶん良かれと思ってあげてきている条例なんでしょうが、あまりに短絡的で、どうかと思ってしまいます。

「依存」というものに関してきちんと調べてみれば、テレビ依存(実は気が付いていないだけでこれの方が問題かも)や読書依存(活字中毒)だってあるわけなので、テレビ視聴時間や読書時間を市や県の条例で制限するべきである、と言っているのと同じようなものです。

そもそも「ネット」や「ゲーム」というものを大括りに扱ってしまっていて、いかにも雑です。「オンラインゲーム」がなんなのか曖昧なまま議論している様子がうかがえます。

「エロ本」も本であれば「学習参考書」も本であるように、オンラインゲームやネット情報も今では多種多様なのにね。

これは、罰則のない「条例」だから別にいいや、と思いがちだし以前なら自分もその程度で流していたでしょうが、高橋議員が言っていたように「条例」にもなかなか効果があるようなので、今後気になる話題です。

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