- 2022.10.27
佐倉市「市内職員向け持ち家手当」を削除するためになした私の議会説明
国の方針に反し、効果がないことが証明されている職員向け手当
2022年9月28日、佐倉市議会にて、市内の持ち家に居住する佐倉市職員向けの「持ち家手当」復活条例が、いわゆる「さくら会等議員団」17名の賛成により可決されました。
以下は、持ち家手当部分を含む市職員の住居手当修正をすべて削除する「修正動議」を上程した際、私がその理由を議場で説明したときの内容です。
端的に言えば、この「持ち家手当」は、「災害時の職員の早期参集」のため、職員の市内居住を促進したいとする「本来の目的」が達成できないことがすでに証明されている、ということを述べたものです。
ご確認ください。
持ち家手当部分を含む条例案に関する髙橋とみおの修正動議説明
佐倉市議会公式サイト:髙橋とみおによる修正動議説明(1時間28分33秒経過から開始)
今回提出する修正案は、執行部が提出した条例案のうち、職員の定年引上げに伴う給与水準の整備にかかる部分のみ残し、住居手当に関する文言のすべてを削除しようとするものです。
本修正案の提出理由は、
- 国の方針に反する条例案でありながら、その行為にかなう準備も、理論武装も、覚悟もないという点。
- 執行部が提示した提案理由のうち、最重要であると考えられる「職員の市内への居住を促進し、もって災害時における職員の迅速な参集を可能とする」ことは、過去の他市事例から実現が見込めないうえ、本案の実現によってかえって居住地による職員の心的分断が生じ、結果職員全体でみれば災害対応に悪影響がでかねない施策であることが、これまでの議会審議で明らかになった点。
- 事務処理誤りで4億2,500万円もの財政的損失を発生させたこと等により、市の財政を再建するために佐倉市全体が一丸となるべきこの時期に、根拠も薄弱な手当を、一部の市職員に限定する形で増設することを認めるわけにはいかない点。
以上より、本案の住居手当部分について、年間約900万円の税金を使うことに、市民に対する説明がつかないことによります。
国の方針に反する条例
まず、国の方針に反するという点については、朝日新聞、千葉日報、そして本日の毎日新聞における新聞報道をひくまでもなく、平成21年に総務省から発出された「職員向け持ち家手当につき、廃止を基本とした見直しを行うこと」という趣旨の通達があったことによります。本通達の結果、国内の9割以上の市町村が職員向け持ち家手当をやめ、現在では千葉県のすべての市町村が本制度を廃止しています。
そんな中、西田市長は突然本手当を復活させる内容を含む条例案を、今議会に上程しました。私が知る限り、いったん持ち家手当を廃止した後、再び復活させた自治体は二つです。そのうち、佐倉市と同じ一般市は大阪府箕面市の1市のみです。
大阪府箕面市の「覚悟」と佐倉市の「覚悟のなさ」
持ち家手当を復活させた当時、箕面市長であった倉田氏は、人事制度と給与制度を大きく変える公務員制度改革の一環として、持ち家手当に該当する内容を含む住居手当制度を導入しました。
本制度は、彼の一貫した大方針のもと、人事制度改革を断行する公約を掲げ選挙の洗礼を受けたのちに、制度改革のプロジェクトチームで内容を練り上げ、2014年の6月に同市議会で議案をはかり、可決されました。
その内容は、現在も箕面市の公式サイトに掲出されている「箕面市の人事・給与構造改革の概要」と題された資料にしっかりまとめられ、公表されています。内容を読めば、住居手当の改革が新しい制度の中にどのような思想で組み込まれているかを知ることができます。
箕面市の手当部分の是非については議論のあるところですが、佐倉市で今回提示された原案と違い、加算措置や災害時の制度面の裏付け等により「市内居住促進」に非常に有利な制度設計になっていることがわかります。
公務員の手当は、民間と比較すればとても手厚いものです。その手当の増設を含む給与改革を、プロジェクトチームによる入念な検討もなく、制度を復活させた他市事例の研究もなく、公約に掲げ民意を問う覚悟すらない中、西田市長は突然本議会で上程しました。
財政が厳しい状況の中、職員の手当の増設を含む給与制度改革は、このように軽々に実施できるものでは断じてありません。
市内居住促進に「効果がない」ことの証明
最後に、持ち家手当や市内と市外の賃貸手当の差分設定が「職員の市内居住促進に効果がなかった」事例を紹介します。
尼崎市は、市内居住促進のため、佐倉市の倍額の月額6,000円で市内持ち家手当を継続しましたが効果が無かったため、以降「職員の新規市内転入」に的を絞った居住促進策に切り替えています。
面白いのは、手当の効果を訴えるべき職員組合が「たかが 6,000 円の差で市内への転入の効果を期待することが間違いである。」と述べていることです。
尼崎市の半額の手当しかない佐倉市で、職員の市内居住が促進される道理はありません。
なお、佐倉市と同様、市内と市外の賃貸手当に差を設け、その差分で捻出した予算で市内在住職員向けの持ち家手当を実施している杉戸町でも、市内居住促進効果があったとするデータは提示できないとのことです。
以上より、本条例案に書かれた住宅手当部分の目的に対して、効果が期待できないのは明確です。よって、原案の住居手当に関する文言のすべてを削除する修正案に、ご賛同くださいますようお願いいたします。
(髙橋注:本件について、「さくら会等議員団」からの質疑は一切ないまま、私の修正動議は否決され、佐倉市職員向け持ち家手当を含む条例原案が可決されました)
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