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佐倉市議会:政党機関紙の庁舎内勧誘行為の実態調査を求める陳情書

2024年9月9日 総務常任委員会

2024年8月定例会において、「政党機関紙の庁舎内勧誘行為の実態調査を求める陳情書」が陳情ととして上程されました。

審議は、私の所属する総務常任委員会に付託されましたので、私の賛否とその理由について申し述べたいと思います。

調べてみると、この内容に類似する陳情は全国の市議会で上程されているようです。

背後がわからない、なんとも奇妙な陳情ですが、内容を読んで思うところを述べました。

陳情の内容は、以下に公開されておりますのでご確認ください。

政党機関紙の庁舎内勧誘行為の実態調査を求める陳情書

以下、私が2024年9月9日の総務常任委員会でなした討論です。


◆本陳情の賛否とその理由

本陳情に、反対の立場で討論いたします。

本陳情は、実に奇妙な気持にさせられる内容でした。

陳情が求めるのは、議員から政党機関紙の購読を勧誘されたときに、市職員が心理的圧力を感じたかどうかを調査してほしい、とするものですが、役所内の職員に対するこのような類の調査権限は市長の権限の範囲です。必要があるならば、やればよろしい、ということでしょう。何も、議会の同意を求める必要などありません。

市長が独断で決めるのは怖いだろうから、議会の同意をとりたい、とするならば、なんとも市長を馬鹿にした陳情です。

他方、討論は賛否の理由を述べる場ですので、その点についてお伝えします。

本陳情について、趣旨には賛同しますが、本陳情には反対します。

趣旨に賛同する、とする部分についていえば、議員からの政党機関紙の勧誘において、心理的圧力を感じたかどうか、という実態調査をし、結果に応じて適切に対応すべき、という点については、あくまでそれが必要だと執行部が判断するのであれば、趣旨としては賛同する、というか、調査に反対する理由はない、という意味となります。その意味で、市長が必要ないと考えている場合、議会がこの陳情を採択してしまって本当によいのか、という一抹の気持ちの悪さは残るわけですが。

一方で、私が本陳情に反対するのは

  1. 本陳情は、議員が職員に対し、政党機関紙を購読勧誘する行為について、職員が「心理的圧力」を感じた場合、勧誘行為自体が「パワーハラスメント」であると断じる構成となっていること
  2. 記事の引用とはいえ、議員と職員は「事実上の上下関係」とする言説が前提となっていること

という点について、問題があると考えるからです。
既に何度もお伝えしていますが、私が陳情や請願を審議する姿勢について、議案の議決権を握る市議会議員として、その内容に、とりわけ論旨の骨格となる部分について問題があると考えるものは、例え趣旨に賛同したとしても反対します。
佐倉市議会における請願・陳情について

それでは、先に私が指摘した「1.」と「2.」のどこに問題があると考えるのかお伝えします。

「1.パワーハラスメントと断じる構成」について

前提として、佐倉市の企画立案機関である佐倉市役所の職員は、当然に情報収集をする権利があり、その情報は政党の機関紙も範囲となります。
また、憲法21条が保障する「政治活動の自由」に照らせば、政党に所属する政治家が、自身が所属する政党の主張を広報するため政党機関紙の勧誘をすること自体、ただちに問題となるとは考えられません。
一方で、議員と執行部との間での慣習や、いわゆる「慣れ合いや忖度」の前提としての政党機関紙の購読が媒介となっていることについては、あくまで自治体ごとに発生する可能性があると考えます。
さらに、勧誘する議員によっては、「機関紙を定期購読すれば相応の配慮はする」といった、いわゆる恫喝に近い行為が発生する可能性もあり、そういった行為についてはやめるよう制度として確立することが求められるケースもありえます。
他方、そのような状況は、あくまで自治体ごとに違いがあるため、いくら複数の他自治体の調査でそれに該当する可能性がある結果がでたとしても、すべての自治体において議員の勧誘がただちにパワーハラスメントであると断じることはできません。
また、個人的な見解としてお伝えするならば、現在の佐倉市議会において「政党機関紙の定期購読をすれば議員が購読職員に対して忖度する」という状況にはないように思います。
その意味で、議員から購読の勧誘を受けた際、もし当該職員にとって不要であるならば、単に断れば足りると考えます。
よって、自治体が認める範囲における「議員からの通常の勧誘」において、職員が「心理的圧力を感じる」ケースが多いのであれば、それは「単に断ることができる」旨を、行政が職員に向けて広報すれば足りるとも考えられます。また、そのような職員に対する啓発こそ、「議員と職員の適正な関係」を構築するためには必要であり、「勧誘→心的圧力→パワハラ→禁止」という方策は、かえって職員や市民にとって「議員が上で職員が下、故に制度で職員を守るべき」という歪んだ認識を再設定する可能性すらあると考えます。
以上より、本陳情には反対するものの、本陳情に指摘されるような「心理的な圧力の有無」を調査することについては、本件に関する今後の制度設計や広報等の検討に重要であることから、あくまで佐倉市が必要であると感じているのであれば、という意味で、実施する必要はあるものと考えます。

「2.議員と職員の上下関係」について

議員と市職員に、上下関係はありません。
本陳情は

  1. 新聞記事の引用として「上下関係」に触れていること
  2. 「事実上の」という前提をおいていること

により一定の配慮はしているものの、本論を読むと「上下関係」が論旨の前提となっているように読めるため、そのような言説は慎むべきと考えます。

確かに、議会は執行部の監視をその業務の中核としています。しかし、それは「二元代表制の本旨」という意味で双方が一定の牽制関係にあるだけであり、上下の関係にはありません。
他方、市職員にも議員にも、そのような「誤った上下関係という前提」で、歪んだ配慮や忖度をしている事案が多々見られるのも事実です。
それは、一義的には双方の歪んだ認識が問題でありつつ、このような言説を「事実上」認めてしまっている言論や社会の問題であるとも考えるため、「上下関係」を前提としている論旨を骨子とする本陳情には反対いたします。

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