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地方議会における会派拘束は、理論上無理がある、という話

佐倉市に28人いる市議会議員のうち、一人会派も含め、会派に所属していない議員は4名です。
会派別市議会議員の内訳はこちらをご覧ください。

佐倉市においては、すべての会派で、議案の賛否について「会派拘束」がかかっています。
これは、会派のある全国のどの地方議会にいえることですが、たとえば「子育て政策に全力投球」をスローガンで選挙に勝っても、所属した会派が子育て政策に熱心でなければ、その議員は自分の意志に反して子育て政策の優先順位を下げた賛否を表明せざるをえないわけです。

会派拘束について、会派別に議決が分かれたという意味で、わかりやすい例をあげます。
これは、佐倉市議会での2017年11月定例会の「請願」の概要と議員別の賛否表です。
「請願」というのは、市民から議会への要望です。
請願のタイトルは『佐倉市公民館の「有料化」を行わないよう求める請願』というもの。
タイトルのとおり、「公民館の有料化はやめてください」という市民からの要望です。
具体的な内容はこちらをご覧ください。

そういった要望を受け入れるか、受け入れないか、を決めるのが市議会議員の役割です。そして、この請願は議員の議決により否決となりました。

この表をみると、さくら会、公明党、市民ネットワーク、のぞみ、日本共産党の会派所属議員は、全員会派内で足並みをそろえた賛否表明をしています。これが、会派拘束です。
他方、「会派に属さない議員」4名については、1名は請願取り下げ、3名は請願受け入れ側の議決をしています。つまり、議員個人の判断で賛否を表明しているわけです。
結論からいうと、私は地方議会で「会派拘束」をかけるのは、理論上問題があると思っています。その理由を述べます。

選挙と会派拘束の関係

市長と市議会議員は、ともに選挙を経て市民から選ばれます。予算をもとに政策を立案する権限をもつ市長と、その政策について「やるorやらない」を決める権限をもつ市議会の構成員である市議会議員が、ともに直接市民から選ばれる仕組みを「二元代表制」といいます。
この日本の地方自治制度は、アメリカの大統領制にとてもよく似ています。アメリカでは、大統領も議員も、ともに国民から直接選挙で選ばれています。
ただ、日本の地方議会と違うのは、共和党議員にしても民主党議員にしても、党議拘束や会派拘束をうけることはないという点です。

さて、市議会議員の選挙は、必ず選挙人(佐倉市であれば佐倉市民)が、候補者の「氏名」を記載する方式をとっています。
国政の比例代表選のように、「政党名」を書く方式をとっている自治体はありません。また、「会派名」を記載することもありません。

しかし、ほとんどの議員は会派に所属し、議会の決定については会派拘束を受ける。もちろん、会派内で議論をした結果ではあるかと思いますが、仮に自分の意志に反するような議案についても、所属会派が「賛成だ!」といえば、賛成に一票投じざるをえない。

「会派拘束」に反対する理由は、上記のようなことがあったとき、直接自分の名前を書いてくれた市民に説明がつかないからです。
実際、これも全国の地方議会の大問題だと思っていますが、議員が議案に対する「賛否の理由」を市民に伝えたがらない大きな原因は、この「会派拘束」にあると思っています。
他方、地方議会では、会派人数が多ければ多いほど、議会での役職や質問時間の優遇があります。その結果、自分の政策を実現したい、とか、自分の地元地区に有利な政策を通したい、などの志がある場合、どうしても大きな会派に入らざるをえない、と考える議員が多いわけです。

「会派拘束のない会派」の出現

昨今、いくつかの地方議会において、上記のような現状に課題意識をもつ議員が、「会派拘束がない会派」を作り始めています。
そういった会派の要綱をみると、そのほとんどが、議会の前に主要議案について会派内で勉強会を実施し意見のすりあわせはするものの、会派拘束をしない(賛否の表明は自由)、という建付けになっています。

とても自然だし、切磋琢磨するべき議員同士の勉強にもなる。また、これならば自分の考えに賛成してくれた市民に、胸をはって「賛否の理由」を表明できるはずです。
加えていえば、会派としての人数が多ければ、少なくとも議会での優遇面では優位になりますから、「会派拘束のない会派」であっても、会派に所属する価値はあります。

さらに、会派内の勉強会や議論をオープンなものにすれば、より市民に多くの情報を伝えることができるでしょう。

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