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小学校給食費軽減をどう評価するか

地方議会の立場からの賛成と留保

国が打ち出した小学校給食費の保護者負担軽減策は、子育て世帯への直接的な支援として、基本的に評価できる政策である。学校給食は、すべての子どもに等しく提供される公共性の高いサービスであり、そこに税を投入することは、世代間の公平性という観点からも合理性がある。

佐倉市においても、小学校給食費は月額約5,000円であり、今回の国の予算規模から考えれば、少なくとも当面は十分に対応可能な水準である。短期的に市の財政を圧迫する政策ではない。この点において、私は今回の措置に「反対」の立場を取るものではない。

もっとも、地方議会の立場から見たとき、賛成と同時に確認すべき論点が存在することも事実である。

第一に、物価上昇への対応である。給食費は食材費、人件費、光熱費といったコストの集合体であり、今後の物価動向によって必要額は変動する。国の補助が定額であれば、数年後には不足が生じ、その差額を自治体が負担する構造になりかねない。制度が「今足りているか」だけでなく、「将来も持続するか」が問われる所以である。

第二に、中学校給食との関係である。小学校給食のみが国の支援対象となった場合、同じ家庭内で学齢によって負担が異なる状況が生まれる。これは家計の感覚としても説明が難しく、いずれ制度の整理が必要になる論点だ。

第三に、地方交付税との関係である。国の新たな補助施策が、別の形で地方交付税の算定に影響し、結果として自治体の自由度を下げる例は、過去にも少なくなかった。形式上は新規支援に見えても、実質的には再分配、あるいは付け替えに過ぎなかった政策も存在する。今回の措置が真に「上積み」なのかどうかは、地方自治体として注視すべき点である。

こうした姿勢は、私が過去に示してきた立場とも一貫している。2021年9月、市議会において学校給食無償化を求める意見書に反対した際も、私は「趣旨には賛成だが、財源が示されていない議案には賛成できない」と述べた。給食への公的支援そのものを否定したのではなく、具体的な政策であればあるほど、財源と制度設計を明確にすべきだと考えたからである。

今回の国の給食費軽減策についても、その基本的方向性には賛成である。だからこそ、地方議会の立場から、物価変動への対応、中学校給食との整合性、地方財政への影響といった点を冷静に確認し、必要であれば改善を求めていく責任がある。

子どもたちの給食を守ることと、将来世代に過度な負担を残さないことは、本来両立すべき課題である。賛否の二元論に陥るのではなく、制度の持続性を問い続けることこそ、地方議会に求められている役割だと考える。

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