- 2023.01.08
施設使用料一括値上げ 懇話会の提言に議会はどう向き合ったか
佐倉市の施設利用料の一括値上げ議案審議
2021年8月定例会
【記事の要約】
佐倉市では、公民館、コミュニティーセンター、スポーツ施設等について、利用者から「施設利用料」を徴収している。
これらの料金は、「利用する市民とそうでない市民」との公平性の担保という観点から、統一的な基準と定期的な料金の見直しが必要だ。
一方、料金の見直しは「より良い施設運営をはかるため」に、市民や学識経験者等によって構成される懇話会の提言とセットで行われるべきであり、佐倉市もそのように運営してきた。しかし、2021年に行われた4年に1度の料金改定の議案で、佐倉市は「懇話会の提言」に関する検討内容を議会に報告せず、利用料の一括値上げとなる査定数値のみを議案上程した。
懇話会の提言には、「利用率・リピート率の料金への反映」や「料金改定と政策誘導」など、検討が必須の重要な内容が含まれる。
委員会審議で執行部の「検討不足」が明らかになったにも関わらず、さくら会等議員団はその点に一切言及することなく、施設の利用料金の一括値上げに賛成した。 さくら会等議員団の「杜撰な審議」により、懇話会の提言は顧みられることなく、2022年4月施設使用料の一斉値上げが行われた。 (以下本編)
佐倉市では現在、公民館、コミュニティーセンター、スポーツ施設等について、利用者から「施設利用料」をいただいています。
かつて、佐倉市におけるこれらの料金は統一的な基準がなく、各施設で価格を設定していたため、施設間で不均衡が生じていました。
このため、納得度の高い行政サービスを提供すべく、施設使用料の「受益と負担の適正化」を図るため、佐倉市行政改革懇話会にて4回にわたる議論を実施し、施設利用料の在り方を全面的に見直しました。
一方で、例えば料金策定の基礎となるべき人件費や水光熱費の変動や、状況に応じた政策誘導のための価格設定等を検討すべく、4年に一度施設使用料の料金改定をする必要性が確認されました。
施設使用料の改定について
施設使用料の考え方は、自治体の財政状況やその時代の社会的な状況によって変わっていくものと考えています。
例えば、これまでも市営のプールやテニスコート等は最低限の利用料金が設定されていました。その前提でいえば、当該施設を「利用する人」と「しない人」との公平性の勘案など、時代の要請に応じて市が所有する公民館やコミュニティーセンター等の利用料を「適正な価格において」徴収するのは必要と考えています。
この議会では、当該懇話会で提起された「4年ごとの施設利用料の見直し」に則り、市長が「この価格でいきたいので、審議してください」と議会に上程した議案を審議しました。
内容は問題ないように思われましたが、審議の過程で以下2点が判明したことから、私は反対しました。
- 施設利用料の改定とセットで検討するべき「懇話会の提言」が、料金改定に検討・反映されていない
- 公務員の給与について、計算方法の変更により、4年前の計算式では算出されない形で一律値上げとなったにもかかわらず、その点の説明がなされておらず、審議の前提の信用性が失われた
ここでは主に、私が特に問題があると考えた「懇話会の提言がないがしろにされた」点について説明いたします。
料金改定以上に重要な「懇話会の提言」
佐倉市からの諮問により招集された佐倉市行政改革懇話会は、4回の具体的な審議を経て、2016年12月に「使用料・手数料の見直しに関する意見書(PDF資料)」を公表しました。この意見書の内容を踏まえて、当時の佐倉市の企画政策課は「佐倉市使用料・手数料の見直しに関する基本方針(PDF資料)」を公表しました。
基本方針で示された料金改定基準は、懇話会の意見書の内容を踏まえて行われるべきものであるのは当然です。しかし、この議会で提示されたのは、単に「基本方針に沿って改定しました」という報告のみで、懇話会でなされた提言に対して、佐倉市としてどう向き合ったのかが一切説明されていませんでした。
そこで、私が懇話会の提言について、どのようなものがあったのかを調べたところ、非常に重要な数々の提言がなされていることが明らかになりました。
少々長くなりますが、懇話会でまとめられた「使用料・手数料の見直しに関する意見書」から、主要な提言内容をそのまま掲載します(読みやすいように、タイトルは私が付けました)。
◆利用率やリピート率等の料金への反映
(施設ごとに)利用率、人気度を料金に反映することが公平感を高める可能性もあります。自転車駐車場料金の見直しにあたり、立地利便性による料金差を設けずに一律で使用料金を上げた結果、住民から不満の声が多かったとの他市事例もあります。将来的な見直しの視点、また施設の有効活用の観点からも利用率などに関するデータを集積してください。また利用者のリピート率、市民の利用か市外の方の利用か、時間帯、休日平日の利用状況なども調べてみることを提案いたします。
◆料金改定と政策誘導
今回の料金改定が結果として増額となるのであれば、使用料の減免等については、少子高齢化への対応や、公共交通の利用促進、シティプロモーションといった政策的観点も踏まえた検討も必要です。メリハリのある使用料の見直しにより、市民の納得度も上がるものと考えます。例えば子どもはすべて無料など、市長のマニフェストや重点施策との連動を狙ってはいかがでしょうか。
◆顧客囲い込みや流入人口寄与の方策
利用状況や施設の性質によっては、市外利用者料金を設定しないことや年間パスポートの設定も考慮してはいかがでしょうか。戦略的な検討が必要となりますが、事例として千葉市の動物公園入園料の改定などが上げられます。
◆他市との施設相互利用による効率化の追及
市民が必要とする施設を市がすべて用意するのではなく、近隣自治体との相互利用など近隣他市との連携を佐倉市が主導する形で積極的に検討してください。現在も保育園の相互受け入れなどを行っていますが、他の施設についても積極的に検討し、効率的な施設運営を図ることが必要です。
◆利用者ファーストの情報提供
施設サービス向上の一環として、施設に関する情報提供も重要です。部屋面積の情報だけでなく、縦横の長さといった会場の形状や、利用人数、設備まで含めた利用者側に立った情報提供を行い、施設利用の促進を図るべきです。
◆料金改定方針原則の策定
個々の施設における使用料算定にあたっては、施設ごとに担当課が検討するとのことですが、基本方針の原則をどの程度守るべきか、またどのような手続きを踏めば方針の原則からはずれてもよいのかという目安を示すべきではないでしょうか。各施設の料金改定に向けての具体的な手順や検討方法を基本方針の中で示すことも検討してください。
◆データ収集方法のシステム化
次回以降の見直しにあたっては、改定事務に膨大な事務量を要しないで済むよう、施設ごとのコスト算出、利用率やリピート率などを含めた必要なデータ収集について、システム化すべきと考えます。またデータの入力についても予約時の利用者入力で対応するなど、出来るだけ省力化し、検討や改善に注力できる仕組みが必要です
いずれの提言も、非常に重要であると考えます。
例えば、「料金改定と政策誘導」という観点でいえば、船橋市では子ども食堂を公民館で実施する場合、登録団体は前日の準備も含めて公民館使用料を無料にしています。この施策により、おおよそ毎回5,000円程度の施設使用料が事実上無料となったことで、子ども食堂の活動が活発化しています。本件は、私たち無会派議員が2022年10月28日、後追い視察で船橋市の子ども食堂を運営している事業者に聞き取り調査も実施していますので確かな情報です。
懇話会の提言に沿って、そういう視点で使用料を検討する必要がありませんか?という話です。
懇話会の提言は「値上げのお墨付き」を与えるものではない
このような検討もせず、単に「ほぼ値上げの料金改定」をするのであれば、懇話会の提言は単に「料金値上げのお墨付きを与えるためだけのペーパー」という意義しかないことになります。
4年に一度利用料を見直す、という行政にとって都合のよい点だけ懇話会の決定に従い、検討が面倒な政策的提言をないがしろにする、という点は許されないと考えました。
私たち議員は、特に市民にとって痛み伴う改定をお願いする議案については、審議は慎重に行うべきものと考えています。
(髙橋とみお議員討論:29分44秒から施設使用料料金改定について ※髙橋議員の討論は28分53秒から)
さくら会等議員団の討論
本件に関するさくら会と公明党の討論では、単に「利用者が限定される施設の使用料は、定期的な料金改定が行われるべき」という理由を述べていました。冒頭説明したとおり、その点については理解しています。そのうえで、委員会等の審議で「懇話会の提言がないがしろにされている」ことが明らかになったわけで、その点についてどう考えるかを述べる必要があるはずです。しかし、両会派からは、現在に至るまでその点に関する見解の表明は一切ありません。
また、自由民主さくらの討論にでは、コロナ禍等で傷んだ経済状況の中、料金改定するのは見送るべきだった、と述べています。見送るべきだと考えるなら反対という立場になるはずですが、なぜか議案には賛成している。私としては、まったく意味がわかりません。
以上が、さくら会等議員団が、使用料の値上げについて本会議の討論でなした「賛成理由の説明」です。
議員が賛否の理由を説明する意味
例えば本件については、そもそも市民から施設使用料をとること自体が間違いだ、と考える方もおられることでしょう。その場合は、本議案について「×」としている議員の中で、そのような意見表明をしている議員を選べばよいのです。ちなみに、繰り返しになりますが、私は料金改定には賛成ですが、必要な検討がなされていないという理由で今回は「×」としました。
その意味で、議員は単に「〇」と「×」を議会で示せばよいのではなく、その賛否理由をしっかり市民の皆さまに伝える必要があることがわかります。
賛否の是非はひとまず置くとしても、さくら会等議員団がなした説明で、十分と考える方がどれほどおられるでしょうか?
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