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歴史体感都市佐倉構想

※本記事は、2023年11月28日になされた、市議会議員髙橋とみおの一般質問原稿です。

1.現状把握

今回は、佐倉市の観光グランドデザインをもとに質問させていただきます。
観光グランドデザインとは、2020年度から2031年度までの12 年間についての佐倉市の観光に関する最上位の計画です。

佐倉市観光グランドデザイン

このグランドデザインの基本方針の①に「観光Wコア構想」が位置づけられています。

本構想は、「城下町地区」と「印旛沼周辺」の2エリアを「消費につながる二つの核」としています。この2エリアの観光拠点をベースに消費を拡大するため、それらをつなぐインフラの整備等、滞在時間を延ばす取組を推進することが本構想の骨子であると承知しています。

本構想について具体性をもって述べている資料は、本グランドデザインの第4章にまとめられています。

この4章を読む限り、Wコアのうちの印旛沼周辺の計画は魅力的である一方、歴史資産を活かすべく立てられた「もう一方のコア」たる城下町エリアの施策は、観光拠点として本当に人を集め、消費につなげられるものになっているのか、しっかりした検討が必要と考えます。

そこで今回は、この観光グランドデザインを軸に、主に佐倉市の歴史資産のとらえ方ついて提案していきたいと思います。

そこで、まずはこの観光Wコア構想について、とくに城下町エリアの「歴史資産に関する施策」に関する現在の進捗と今後の展開について、市長の考えをうかがいます。

執行部(市役所)回答

観光Wコア構想に基づく城下町エリアにおける観光拠点の整備の取組といたしましては、現在古民家の有効活用の検討を進めているところでございます。本取組は、歴史の趣を感じられる古民家を飲食、物販など、消費を促す施設として有効活用することでまちのにぎわいを周辺地域に波及させ、観光需要を創出するものとして進めているもので、現在市が所有しております旧今井家、旧平井家の古民家をどのように民間活用するか検討を進めるため、トライアルサウンディングを実施しているところでございます。今後はこの取組を皮切りに、周辺公共施設の活用や空き店舗対策とも連携し、城下町地区の活性化を進めてまいりたいと考えております。

ありがとうございました。
いただいたとおり、Wコア構想の二つのコアのうち、ひとつは佐倉市の歴史資産の展開であり、その中心が旧城下町地区であることがわかりました。

2.佐倉市の歴史資産

旧城下町地区には、いうまでもなく旧堀田邸や武家屋敷があり、旧平井家やお囃子館が整備されています。また足を延ばせば歴史民俗博物館やその周辺の城址公園もあります。堀田11万石の風情を伝える街並みや文化財級の建造物も残り、近世から近代初期について体験するにはこれ以上ない好適なエリアです。

佐倉市を歴史視点で考えたとき、旧城下町地区は「コア中のコア」であることは論をまちません。他方、旧城下町地区だけにとらわれると、歴史資産としての佐倉市の本来の価値を見失うことになるとも考えます。

結論からお話しすると、私は佐倉市全体を歴史の展開面ととらえ、現在から古代にさかのぼる日本の「縦の歴史」を体感する大きな装置としてとらえなおす必要がある、と考えています。
そこで、まずは時代をさかのぼる形で、佐倉の歴史を概観してみましょう。

主な歴史資産の棚卸

まず近代に目を向ければ、佐倉連隊が立地し、第二次世界大戦終戦までの痛ましい軍都としての歴史が映し出されます。
そこで、佐倉市が軍都としての性質をもつにいたった歴史の流れについて、詳しく教えてください。

執行部(市役所)回答

連隊のまち佐倉の歴史につきましては、明治初期に佐倉城内の建物が解体され、陸軍歩兵連隊の兵営所が置かれたことから始まります。佐倉連隊は郷土部隊でもあり、地域の人々との生活とも結びつきました。西南戦争や日清、日露戦争のときには連隊は戦地へ派遣され、昭和に入り、日中戦争を経て兵営所は兵士を戦地へと送る場となり、連隊の郷土部隊としての性格が薄れていきました。また、第2次世界大戦末期には、連隊はフィリピン、レイテ島などへ派遣され、補給や援護の届かない激戦のさなかで多くの命が失われました。その後、終戦を迎え、連隊のまちとしての歴史を閉じることとなりました。

ありがとうございました。
以上からわかるのは、歴博や城址公園を点ととらえた場合でも、あの一帯が近世から近代への、重大な橋渡しの場という側面をもっていることがわかります。
私見ですが、佐倉市が軍都としての役割もった悲劇的な歴史は、蓋をするのではなくしっかり語り継いでいくことが、「戦争を起こさない日本」を続けていくうえで大変重要と考えます。

近世については、言うまでもなく堀田11万石をはじめとする佐倉城が、日本の譜代大名の在り方を今に伝えています。
本件について、主要なポイントとあわせ、特に中世から近世へ幕開けとなる時代について教えてください。

執行部(市役所)回答

戦国時代から江戸時代へ時代が移り変わる中で、佐倉を支配していた武家が入れ替わりました。豊臣秀吉が小田原の北条氏を滅ぼすと、これに従っていた本佐倉城の千葉氏、臼井城の原氏は没落しました。代わって関東を支配することになった徳川家康の一門や家臣が佐倉を治めることとなりました。その後、江戸幕府の体制が整う中で大名や家臣の再配置が行われ、中世の城館は姿を消しました。これらに代わって、新たな時代にふさわしい城として築城されたのが佐倉城です。家康、秀忠、家光の3代の将軍に仕えた土井利勝が約7年の歳月をかけて築城し、江戸を守る要衝の一つとして有力な譜代大名が城主となりました。

ありがとうございました。現在の城址公園は、まさにそのような「日本の歴史の引継ぎ」がなされた場所です。譜代大名の城跡が連隊となった土地が、すべて公園として残っていることは非常に貴重です。

中世のおわり、つまり戦国や安土桃山の時代にも、佐倉は千葉の中心的都市のひとつでした。千葉一族が、享徳の乱といわれる内乱により、佐倉市から酒々井町にまたがる丘に城を構え、下総の中心として栄えたのです。
そこで、享徳の乱と佐倉千葉一族の関係について教えてください。

執行部(市役所)回答

享徳の乱は、室町時代の関東を統括した鎌倉公方とその補佐役である関東管領の対立を軸に、諸勢力も双方に分かれて対立し、関東全域を巻き込んだ内乱です。佐倉市域を治めていた千葉氏やその家臣たちもこの動乱に巻き込まれ、分裂しました。その中で、千葉氏は新たな本拠地として本佐倉城を整備しました。本佐倉城の城下には市が立てられ、城下町としてのにぎわいが見られたと言われています。また、和歌を通じた文化的ネットワークも形成され、当時の佐倉は下総の政治、経済、文化の中心となりました。

執行部の先の説明のとおり、千葉一族が本佐倉城を構えたのは、「享徳の乱」が契機となったわけです。この内乱は「関東の応仁の乱」といわれ、関東の戦国時代の幕をあけたという意味で、日本史の、とりわけ関東の歴史について非常に重要な意味をもつことがわかりました。その乱の中心に千葉一族が関与し、その千葉一族が現在の千葉市から移り住んだ先が本佐倉城だったわけです。

また同じ戦国時代、上杉か北条か、という文脈で関東の覇者を決定づける重要な攻城戦が、臼井城で行われました。千葉一族がこの戦でかの上杉謙信に勝利したことで、佐倉市は結果的に豊臣秀吉の小田原征伐で滅ぼされるまで北条方でありつづけたわけです。

平安時代の佐倉には、将門の伝説が今に伝わります。関東の英雄である平将門と、義民として知られる佐倉惣五郎が合祀されている口ノ宮神社は将門に立地しています。

古代に目を向ければ、現在の白銀にあったとされる謎の多い長熊廃寺(ながくまはいじ)があります。
この寺院について、その重要性を中心に教えてください。

執行部(市役所)回答

長熊廃寺跡は千葉県指定史跡であり、現在の長熊の五良神社の周辺にかつて存在した古代の寺院跡です。長熊廃寺は8世紀初頭、奈良時代頃に建てられた本格的な瓦ぶきの寺院です。その瓦は、奈良の山田寺の瓦文様の系譜であり、都と関わりを示す重要なものです。佐倉市周辺を治めていた有力豪族が建立したと考えられています。房総最古の寺院で、7世紀後半建立の龍角寺と時を置かず建てられた寺院は北総地域では数例であり、長熊廃寺跡の周辺は仏教の信仰と政治の中心地でした。

執行部の説明のとおり、本寺院跡は北総台地に残る数少ない古代寺院の跡として大変貴重なものです。8世紀初頭、つまり奈良時代に仏教が佐倉まで伝わっていたことを示す重要な寺院であり、大伽藍の在り様を再現できれば歴史のロマンそのものといえそうです。

さらにさかのぼり、古墳時代の遺構としては、山崎(やまのさき)のひょうたん塚古墳や飯塚の15号墳があります。これら古墳はともに前方後円墳であり、佐倉周辺の首長がヤマト政権の秩序の中にあったことを物語る極めて貴重な古墳です。

弥生時代、六崎大崎台遺跡はJR佐倉駅の南側に立地していました。140メートル四方の大きな集落跡であり、周囲に堀溝(ほりみぞ)がめぐらされたいわゆる環濠集落の形式をとった貴重な遺跡です。

縄文時代については、環状盛土を伴う井野長割(いのながわり)遺跡は国の史跡に指定されている他、200軒以上もの竪穴住居跡が見つかった宮内井戸作(みやうち・いどさく)遺跡があります。

このような魅力的な史跡が103キロ平米という面に、多数散りばめられるように立地している佐倉市は、日本の、とりわけ関東の歴史を概観するにはこれ以上ない「歴史体感都市」といえます。そして、それらの歴史を体系的に学ぶ総仕上げは、国立歴史民俗博物館で可能です。

日本中どこを探しても、国立の歴史博物館を含め、このように網羅的に日本の歴史を体感するのに好条件を備えた自治体はありません。

ここで、そうはいっても、すでに無い建物ばかりじゃないか、と思われるかもしれません。
確かに、佐倉城も、本佐倉城も、長熊廃寺も、環濠集落も現在の佐倉市で目にすることはできませんし、場合によってはその上に民家や駅が立ち並んでしまっています。

しかし、現存していない歴史的建造物を「見る」ことで歴史体験ができる技術が、すでにあるのです。むしろ、現在と過去の在り様が比較できるという意味で、現在的建造物が立ち並んでいることが好条件であるともいえるかもしれません

そこで私からの提案は、実例をもとにエッセンスの部分をお伝えしたうえで、なぜ私がそのような提案をするのか、という点について後段で確認していきたいと思います。

3.提案

私の提案は、目につけるゴーグルのような装置で、その場所にかつてあった歴史的な建造物などの映像をみせる手法で、佐倉市をまるごと臨場感あふれる歴史体験の街とする構想です。

現場でVR、つまり歴史的な映像を閲覧するのに最低限必要な機材は

  • ヘッドマウントディスプレイ(HMD)、もしくは観光客ご自身のスマートフォン
  • インターネット回線

となります。

HMDというのは、図1にあるような海水浴の際に装着するゴーグルのようなものです。

【図1】男性が装着しているゴーグルのようなものが、ヘッドマウントディスプレイの一つ。

それを装着すると、目の前に歴史的なCGや映像が展開します。例えば、城址公園用のコンテンツとして佐倉城をCGで再現した場合、現実の城址公園の風景の中に佐倉城が本物さながらに出現します。

構想としては、佐倉市をいくつかのエリアに区切り、それぞれにVRコンテンツを設定します。例えば佐倉城は、現存している土塁などに重ねる形で城門や天守閣を展開し、あるいは大手門から参勤交代の行列が出てくる、などのコンテンツが考えられます。また、映像を切り替えれば、同じ場所で昭和初期の57連隊の行進や訓練をみることができる。
臼井城に行けば、上杉謙信公の軍勢が、まさに決死の攻城戦を繰り広げている映像をまのあたりにする、という具合です。また、それぞれに説明やクイズをセットして、コンテンツとして成立さることも可能です。

図2は、伊達政宗の居城として有名な仙台の青葉城の実施例です。

【図2】観光客が、貸し出されたヘッドマウントディスプレイで、過去の青葉城を観覧している。観光客ご自身が、現実に歴史的建造物の中や外にいるかのような没入感を体験することができる。
観光客が見ている景色の事例1:城内の能楽堂
観光客が見ている景色の事例2:城門と櫓

青葉城のようにヘッドマウントディスプレイ(HMD)を用いる場合は、機材貸し出しの基地を設定します。

佐倉市の場合なら、例えば市内のホテルや、夢さくら館、観光協会の事務所を貸出拠点とする、などが考えられます。

ちなみに、青葉城のコロナ前のケースを簡単に紹介すると、お城に来る来場客が年間90万人、うち青葉城資料館への入場者が10万人、うちこのVRコンテンツを体験する人は1.7万人とのことです。VR体験のためのHMDを借りるためにかかる予算は大人800円、中高生600円、こども500円です。コンテンツ制作にかかった予算が約2000万円、HMDの予算が1台約6万2000円で、現在100台保有しているとのことでした。減価償却にかかる期間は、およそ3年程度ではないか、とおっしゃっていました。

青葉城資料館の学芸員の方の言葉で印象に残っているのは、HMDではなく携帯電話やタブレットで展開する方法もあるが、HMDの没入感は代えがたい、とのことでした。ちなみに、複数回実施した来場者向けアンケートでは、毎回満足された人が9割以上という結果だそうです。

佐倉市の場合、エリアごとに設定した「歴史体感コンテンツ」をいくつか用意できれば、大手旅行代理店とタイアップし、様々な魅力的な旅行商品が展開可能と考えます。

また、観光客に、より楽しい歴史体験をしていただくには、一つのコンテンツに説明やクイズを設定し、その結果をプレゼントにつなげるようなオリエンテーリングの要素をあわせたコンテンツを作る事も検討可能です。

例えば、真言宗の総本山として有名な高野山の事例を紹介します。図3をご覧ください。

【図3】高野山のイベントチラシ

この謎解きイベントは、参加者ご自身のスマートフォンと、イベント参加用に購入したキットを手に高野山の文化財をめぐりながら、各所に仕掛けられた様々な謎を解き明かし、高野山の多様な魅力を楽しめる体験型プログラムです。
このプログラムの優れたところは、スマートフォンに映し出される映像やCGを見ながらの謎解きや宝探しを通じて、文化財をより深く知っていただくことができること。また、謎解きにより観光客が自然に長く滞在する仕掛けになっていることです。

利用者がもらえる参加キット

このコンテンツは、謎解きをすべて実施すると5時間を要するよう設計されているため、プログラム参加者の多くが宿泊を伴うアミューズメントになっています。
このイベントの参加費用は一人2500円でした。

ちなみに、リアリティのある体験が可能なHMDなら、歴史資産にかかわらず、すべての観光に応用可能です。
たとえばふるさと広場のチューリップ、ひまわり、コスモスなどは、もっとも美しい時期の映像をとっておけば、そこに花が無いシーズンでも、リアルに、現地で体感できます。もちろん、雨が降った場合は現地にいかずとも、HMDさえあればどこでも体験いただくことができますから天候に左右される心配もありません。

さらに、宿泊客に対しては、HMDを持参のうえ夜にふるさと広場に観光バスでお連れすれば、佐倉の花火大会をそのまま体感いただけるコンテンツも制作可能です。音声も利用可能ですから、こちらも相当程度リアルに花火大会を体感いただけることはもちろん、「夏には佐倉市で本物を体験してみたい」という顧客誘引策のひとつとしても利用可能なわけです。

一方、高野山の事例のように、観光客ご自身のスマートフォンをVRコンテンツ閲覧用デバイスとして利用した場合、機材の貸し借りが不要であること、VRコンテンツを展開する場所にWi-Fi設備が必ずしも必要ではないこと、などの利便性がある一方、没入感のあるコンテンツが提供しづらいこと、料金を徴収することが困難であること、などのデメリットもあります。

いずれの方法をとるにしても、政策する映像やCGがしっかりしたものであれば、現地での体験型案内の他、大スクリーンに投影することも可能です。例えば、音楽ホールやミレニアムセンターのスクリーンに映し出して映画のように来場者にご覧いただければ、一気に数百人の観光客や市民のための歴史イベント用コンテンツとしても利用可能です。

先にご紹介した青葉城や高野山では、図4のようなVRシアターでスクリーン展開しており、いずれも観光の目玉になっています。

【図4】高野山デジタルミュージアムのVRシアター
青葉城資料展示館のCGシアター

他自治体や民間の先行事例はすでに多くあり、実際に集客におおいに貢献しています。VRを使った観光施策は、すでに良い意味で枯れた技術であるということもできます。
一方、お城や城下町の風景などごく狭い範囲でVRを活用する事例は数多くありますが、市全体を一つの歴史資産としてとらえて、通史的に学びが得られる展開をしている自治体は皆無です。

それらすべてを佐倉市で設定するとして、かかる予算は4000万円から7000万円のレンジです。先行事例の予算感を見る限り、どんなに予算をつぎ込んだとしても1億ということにはなりません。

ちなみに、城を物理的に再建するとした場合の目安として例をあげると、現在名古屋城を再建するのにかかる総予算は約500億円とのことです。名古屋城とは比較できませんが、佐倉城を城門から天守閣まですべて再建するには、相当な予算規模になることが予想されます。

また、VRコンテンツはリアルなお城の建設とちがい、研究が進んで間違いがみつかったら容易に修正することができる他、季節によって、あるいは企画によってコンテンツを追加したり修正したりすることも安価に、短い時間で実行することが可能です。

予算の優先順位という観点でいえば、以上のようなコンテンツ整備に7000万円かけることと、西部自然公園に残る全ての民有地の買い取りに数億円かけることと、どちらの優先順位が高いでしょうか?

4.事業目的

以上、エッセンスのみとなりますが、私からの提案でした。
私がVR技術をもとにしたデジタルによる歴史体感都市構想について提案をした理由は大きく二つあります。

  • 観光事業としての歴史資産の利用
  • 佐倉市民の誇りや愛着の醸成、及び学習資産としての利用

さらにいえば、それらのかけがえのない佐倉市の歴史資産を後世に残すためでもあります。

次に、時間の都合により、観光事業という側面について「なぜVRなのか」を確認していきます。

地域経済循環率

地域経済循環率は、当該地域の観光を語るうえで必須です。
「地域経済循環率」とは、地域経済の自立度を示す指標で、生産(付加価値額)を分配(所得)で除した値を指します。
そこで、まずは佐倉市の地域経済循環率について、観光グランドデザインに沿ってご回答ください。

執行部(市役所)回答

佐倉市の地域経済循環率につきましては、観光グランドデザインを策定する際に調査した2013年の数値におきまして70.5%という値であり、当時県の84.1%を大きく下回っておりました。この要因の一つといたしまして、市外から訪れた方々が市内で消費していないことを示しており、佐倉市の観光事業における課題は、観光が地域経済の活性化につながっていないことであると捉えたところでございます。

残念ながら、佐倉市は本数値がとても低いことがわかりました。

地域経済循環率が低いとき「地域経済の疲弊」や「地域の自立性の低下」といった問題が生じます。

これらの問題を解決するためには、地域で経済を循環させる仕組みを作り、地域内で効果的に稼ぐ産業を育てることが重要です。
特に、経済循環のための「消費」には、他地域の方々が佐倉市に長くとどまってもらうことが必要ですが、2017 年の佐倉市の調査結果では「1 時間未満の観光客が全体の約 4 割を占めており、滞在時間が短く、観光が消費に繋がっていない状況です。」と指摘されています。
佐倉市の観光施策では、観光客にどこで、どのように消費いただくかという計画や整備が必要であることはもちろん、同時に観光客の滞在時間を延ばすことが必須です。

さきにお伝えした高野山の事例などを考えれば、VRコンテンツは観光客の滞在時間を「楽しく」引き延ばすのに最適なコンテンツといえます。

立地条件

次に、佐倉市の立地条件について確認します。
佐倉市の立地条件について、観光グランドデザインに沿ってご回答ください。

執行部(市役所)回答

佐倉市観光グランドデザイン策定に当たって立地条件を分析したところ、佐倉市は近隣市町と合わせ、人口が合計164万人を超えるというマーケットを有しており、また都心からのアクセスもよく、そして世界の玄関口である成田国際空港にも近接しているという、観光においては大変恵まれた立地条件を有していると捉えたところでございます。

佐倉市は、観光施策をうつには好立地です。
執行部が説明してくれたとおり、東京からも成田空港からも近いため、施策さえ魅力的なものならば東京をはじめ、遠方地や海外客の、より一層の増加を見込むことができます。

特に、今後も円安はさらにすすんでいくことが予想される中、インバウンドは積極的に狙うべきターゲットです。ちなみに、本日提案したデジタル施策ならば、説明やクイズ、ゲームなどについて、言語切り替えは非常に手軽にできます。

国内、海外を問わず、従来の物見遊山の観光旅行から目的やテーマを持ったニューツーリズムへとマーケットニーズが変化してきている点も、本施策に非常に有利な点だといえるでしょう。

佐倉市の認知度

佐倉市の認知度について、観光グランドデザインに沿ってご回答ください。

執行部(市役所)回答

コロナ前の平成30年度に都内で実施したイベントにおいて行った来訪者に対するアンケートでは、65%の方が佐倉市を知らないまたは佐倉市に行ったことがないという回答でございました。そのため、観光グランドデザインを策定する際、前提条件といたしまして、都内における佐倉市の認知度は低い状況であると捉えたところでございます。

佐倉市の認知度が、衝撃的に低いことがわかりました。これは、佐倉市の計画より早いスピードで佐倉市の人口減少がすすんでいることに直結する問題です。国民は例えば「子育て支援につよい流山市」、「歴史のまち鎌倉市」、「東京通勤に至便な船橋市」、「ディズニーランドのある浦安市」という具合に、自分の住む場所を考えます。今の佐倉市に、何があるでしょうか?

本施策は、市全体で日本の通史を体感できる都市として位置づける野心的なものです。また、それができるのは佐倉市のみであるとう点についても述べてきました。

報道各社が取り上げただけで、やりようによっては認知度向上について数千万円の価値があります。つまり、プロモーション効果だけで本施策の初期費用分の価値を創出することも可能かもしれません。

関係機関との連携

関連機関との連携について、観光グランドデザインに沿ってご回答ください。

執行部(市役所)回答

観光施策をより強力に進めていくためには、観光協会や商工会議所はもちろんのこと、交通、宿泊などの観光関連事業者や国、県、周辺自治体、そして関係する事業者との連携を強化することが必要であると認識をしております。また、市民の皆様にも参画していただき、住んでいるまちに誇りと愛着を持っていただくことが必要不可欠であると考えております。

私としては、歴史民俗博物館や川村記念美術館などとの協力、コラボレーションをしっかり再検討する必要があると考えます。例えば、VRコンテンツを制作するにあたり、歴博の監修協力をお願いするという方策も検討可能でしょう。
加えて、市民や観光客を巻き込んだ施策は十分か、検討する必要があります。
特にSNSが発展した昨今では、最も効果的なプロモーションは市民国民から発せられる場合が多くあります。
その意味で、図5で示した現在の佐倉市観光グランドデザインにある推進体制の図は再検討する必要があるでしょう。

【図5】佐倉市観光グランドデザインの48ページに掲載されている「推進体制」の図。本来は、佐倉市が図の中心に記載され、「観光行政」について主体的役割を担う佐倉市の責任を明確に定義し、関係機関との連携・調整が明確に図説されることが必要。この図では、「観光グランドデザイン」について、佐倉市が関係諸機関と同列のプレイヤーになってしまう。また、プロモーションにしても企画にしても、協力者・推進者としては最上位に定義すべき市民や観光客の扱いが低い(観光客にいたっては記載がない)。

現在における連携の図としては、市民や観光客を最上位に置く考え方にすることが必須です。

5.ターゲット

想定するターゲットについて、観光グランドデザインに沿ってお答えください。

執行部(市役所)回答

観光グランドデザインにおきましては、「3つのとなり」というキーワードでターゲットを設定しております。1つ目は、まちのとなりとして市民や近隣市町の方々を、2つ目は都心のとなりとして都内在住、在勤、在学者を、そして3つ目は成田空港のとなりとして、インバウンドを含む成田国際空港の利用者をそれぞれターゲットとして想定しております。この3つの隣に対しまして、観光グランドデザインにおいて明確なターゲット戦略、取組を掲げ、そしてターゲットごとのモデルコースなども今後設定していく予定でございます。

観光を考えるとき、ターゲットはしっかり顔が見える状態にまで彫琢を重ねる必要があります。

年齢、性別、配偶者や子供の有無、家族形態、年収、趣味、住まい、仕事内容、など、細かく落とし込み、そのターゲットがどのくらいのボリュームになるかをリアルな数字に落とし込み、それを元にKPIをたてる必要があります。そうしなければ、そもそも目標は絵に描いた餅にしかなりません。

観光施策にかかわらず、佐倉市で公表している目標値や事業評価基準は、控えめに言って相当甘い、あるいはほとんど意味をなさないものすらあります。武士の情けで具体的な事例の提示はここでは避けますが、今後作られるものでそのような目標を見つけたらしっかり公表し、批判していきます。
本件は、今後に期待します。

6.まとめ

以上みてきたとおり、本提案は、手前みそではありますが、佐倉市観光グランドデザインを達成させるための施策と言い換えてもいいほどに、本計画に対する親和性が高いと考えます。

最も大事なのは、しっかりしたビジョンをもって取り組むことです。

一番だめなのは、例えば流行りだからとりあえず100万円使ってデジタル化してみよう、という思考停止的な施策です。このような事例は、他自治体では多くみられますが、結局何も生み出さず、なんの検証にもならず、「やっぱりVRはだめだね」という雰囲気だけが定着してしまいます。

なにを目的に、誰をターゲットに、どのようなKPIをいつまでに、というしっかりした骨格があって、その中で数年に及ぶ計画を立案するのはありですが、場当たり的な予算コストの逐次投入は下策です。

このような施策を取り組む際は、とにかくしっかりしたビジョンを組み立てていただきたいと切にお願いします。

最後に、市長に伺います。佐倉市観光グランドデザインの実現に向けて、城下町エリアなどの歴史資産を活用していくには、今回私が提案したことにかかわらず、新しいアイデアを積極的に取り入れ、適切なプロモーションを行っていく必要があると思いますが、いかがでしょうか。

執行部(市役所)回答

佐倉市観光グランドデザインを着実に実現し、その取組を城下町エリアの活性化につなげていくためには、民間事業者や市民の皆さんなど様々な方々のご意見を取り入れるとともに、時代の変化により生まれる新たなアイデアを積極的に取り入れていく必要があると考えております。それらの意見も踏まえながら、今後観光地佐倉を多くの方に知っていただき、そして来ていただけるよう魅力の推進、情報発信に努めてまいりたいと考えております。

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著 者:髙橋 とみお
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