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議員が監査委員という違和感 監査の専門性が担保できるのか?

さくら会等議員団の「持ち回り職」としての監査委員

2021年5月臨時会

【記事の要約】

佐倉市を含む全国の市区町村に必ず設置される「監査委員会」。
現在、佐倉市の監査は3名のうちの1名が議員から選ばれており、当該委員には議員報酬とは別に月額49,000円の報酬も支払われている。
国は「監査委員はより独立性や専門性を発揮した監査を実施するとともに、議会は議会としての監視機能に特化していくという考えもある」という審議会の答申のもと、法律を改正して「会計監査の素人」たる議員を監査人として選定しなくてもよいように立法した。
しかし、佐倉市議会では未だに「議員から選抜される監査人」を手放さず、議員の一人を監査人に選定し続けている。
この議選監査委員は、常にさくら会等議員団から選出されている。(以下本編)


佐倉市を含む全国の市区町村には、必ず「監査委員会」が設置されています。

この「監査委員会」というのは、主に財務に関する事務について、行政が法律や法令に違反していないか、効率的に行われているかを監査し、その結果を住民に広く知らせるための機関です。

現在、佐倉市の監査は3名の委員により構成されており、そのうちの1名が佐倉市議会議員から選ばれています。当該委員には、議員報酬とは別に月額49,000円の報酬も支払われています。

私が本議案に反対した理由は、「議員から選出される、いわゆる議選監査委員」の制度そのものに反対だからです。

議選監査委員に反対する理由

市議会議員は、議会議員として執行部の監視権限を与えられています。一方で、議員は市民の代表として、事業の優先順位に関する知見をもとに活動する立場であり、議員個人が会計監査の専門知識を有しているわけではありません。

よって、議員は議員として、執行部の監視・監査を全うすればよいのであって、市長が任命権者である定員制の監査委員の一名が議員から選ばれることは、かえって監査の専門性や独立性を損なうことにつながることになる、という考えによります。

なお、この考え方は特殊なものではありません。

国の法改正と議員選出監査の問題

2016年3月、国は第 31 次地方制度調査会の答申を公表しました。

答申内容には「監査委員はより独立性や専門性を発揮した監査を実施するとともに、議会は議会としての監視機能に特化していくという考えもあることから、各地方公共団体の判断により、監査委員は専門性のある識見監査委員に委ね、議選監査委員を置かないことを選択肢として設けるべきである」とあります。

さらに、この答申に沿って、国は2018年4月1日地方自治法を改正し「ただし、条例で議員のうちから監査委員を選任しないことができる。」という一文を追記しました。

これにより、それまで自治体の義務であった「議選監査委員の設置」が、自治体の判断で「設置しなくてもよい」ことになったのです。

これは、民間で経営を経験された方ならば当然のことに感じることでしょう。自社が監査を受ける際、監査人に会計の素人がいることの有効性など、考える必要もないことだからです。

これ以降、全国の市町村(地方自治月報第60号では42市町村)で「市の監査委員を議員から選出(議選)することはやめる」条例が制定されはじめていますが、佐倉市では未だに議選監査委員が1名存在し、冒頭のとおり議員報酬とは別に月額49,000円が当該委員に支払われています。

議選監査委員の設置理由とその反論

そもそもなぜ「議選監査人」が設置されるようになったか、また議選監査の有効性について、議選監査に賛成する専門家による代表的な説明と、その説明に対する私の見解を簡単に表明します。

議選監査委員の制度は自治法制定時からあったのですが、当初のねらいについて、大正大学の江藤俊昭教授は、その著書の中で以下のように述べています。

「監査委員制度が生まれた際に、その説明では、識見だけではなく、力を持った議選がいるからこそ充実した監査ができると、その必要性がうたわれた」。

議選監査委員の「用心棒説」と呼ばれる説明です。私は、地方自治法制定当時を知る者ではありませんが、現在「用心棒」たる議選監査人がいないと、充実した監査が実現できない合理的な理由は見当たらないと考えます。

また、木田弥氏は、2017年1月13日に掲載の「議員NAVIウェブマガジン」で以下のように述べています。

「議選監査の存在は、予算を審議しているという点などからも決算審査での議論に深みと広がりを与える意味で有用であるし、一方で、議選監査を経験した議員が、監査委員としての着眼点を意識しながら、今度は一議員として、議会の決算認定に臨むことで、議論の質がレベルアップするという効果も期待できる」。

つまるところ、勉強は自分でしてください、という理由で私としてはとうてい納得できません。「深みと広がり」、勉強してください、本当に。

むしろ、地方自治体の会計監査制度の主旨からみても、議員の監査の専門性の欠如という観点からしても、監査の独立性から考えても、議選監査制度の有効性は「ほぼない」と考えます。 なお、この議選監査委員については、常にさくら会等議員団から選出されていることを付記しておきます。

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