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2022年12月13日:佐倉市議会文教福祉常任委員会における平野裕子委員長の不信任決議、及び辞職勧告決議の可決にいたる経緯について

◆会議

文教福祉常任委員会

2022年12月13日火曜日10時00分

議会棟 第三委員会室

◆出席委員

(委員長)平野 裕子

(副委員長)斎藤 明美

(委員)川口 絵未

(委員)石井 秀明

(委員)押木 孝和

(委員)藤崎 良次

(委員)髙橋 とみお(本人)

◆要約

  • 佐倉市議会文教福祉常任委員会において、平野裕子委員長が、髙橋とみお委員の委員会内での発言(議案に対する執行部への要望)を制止したことにより、両議員間で議論が発生した。
  • 双方の主張が折り合わず、結果平野委員長が髙橋委員への発言制止命令を取り下げない場合、髙橋委員が平野委員の不信任決議を提出せざるをえない旨確認したところ、平野委員長より了解を得たため、髙橋とみお委員は「平野裕子委員長の不信任決議」を同委員会に提出し、可決した。
  • しかし、その後も平野委員長は委員長職を継続する旨表明したため、同委員会の委員である川口絵未委員は「平野裕子委員長の辞職勧告決議」を同委員会に提出し、可決した。
  • 上記二つの決議が可決されたが、平野委員長は委員長職を継続する意思を表明し、現在にいたる。

◆経過詳細

  • 佐倉市議会令和4年11月議会に付託された議案中、文教福祉常任委員会に付託された議案について、同委員会で審議が行われた。
  • 教育委員会の議案説明が終了し、公明党:押木委員→自由民主佐倉:石井委員→市民ネットワーク:川口委員の順に質疑が行われた。
  • 市民ネットワーク:川口議員の後、髙橋委員が質問した。

事案発生

  • 髙橋委員は質問を用意していたが、先述の多数の委員による質問の後だったため、質問は「新図書館の駐車場について、無料とされる時間を3時間とした根拠は何か?」という1点であった。
  • 本質問に対して教育委員会より答弁があった後、髙橋から以下3点の要望をした。
  1. 図書館や美術館、近隣商店街に所在する商店や飲食店を利用して3時間を超えた来場者は駐車場が免除されるとのことだが「本規定を知る人と知らない人」との間で不公平が発生しないよう、その広報を(館内掲示物、ネット、広報誌等で)来場者や市民に対してしっかりお願いしたい。
  2. 3時間超の駐車に関する有料or無料の判断について、公平性が担保できるように、規定の整備をお願いしたい。例えば、新図書館近くに立地する佐倉小学校に運動会で来た市民は無料か?商店街内にあるお寺に墓参りに来た参拝者は無料か?商店街内に所在する宿泊施設に泊まった客は無料か?等詳細を詰めてほしい。
  3. 駐車場利用者中、不正利用を繰り返した場合、不正利用車両等の貼り紙をする場合もある、という件について執行部より説明があった。その姿勢は賛同する一方、貼り紙対応となる不正の頻度やレベルについて、明示的な規定を作成してほしい。
  • 以上の主旨の髙橋からの要望の最中、平野委員長から、髙橋委員に対して発言制止命令が入った。
  • 髙橋が本命令の理由を確認したところ「委員会審議は、質問の場であって要望の場ではない」とのことだった。他方、過去の委員会審議において、委員から執行部へ要望することは通常の審議姿勢として認められた行為である上、平野委員長は他議員がなす執行部への要望の発言を許可していたため、髙橋委員から平野委員長に抗議をした。
  • 平野委員長は、質問に紐づいた要望のみ認められるものであるため、要望のみの発言は委員長として認められない旨発言があった。
  • 佐倉市議会のすべての委員会では、慣例として「要望のみの発言」も認められており、「質問に紐づいた要望のみ認められる」という規定はないこと。また、平野議員自らが、過去「質問に紐づかない要望」を実施している(※下段「別添説明」参照)他、多くの議員が「質問に紐づかない要望」をしていること。さらに、髙橋委員の要望も、もとは質問と紐づいたものであったが、事前の質問者の質疑によりすでに疑問は解消されていたことから、要望のみ発言すれば足る状態にあった。よって、平野委員長の「質問をからめて要望せよ」という命令の妥当性はない状態にあった。
  • もし、「質問に紐づいた要望のみ認められる」というルールだった場合は、要望をするために質問順は取り合いになり、落ち着いた審議はできない。
  • その他、別添説明のような「議員の言論の自由」が保障されている等の背景もあるため、髙橋委員から平野委員長に「発言の制止を委員長権限で実施するならば、委員長の不信任決議を同委員会に上程するがよいか」と確認したところ、平野委員長の同意を得たため、髙橋委員はいったん発言(執行部への要望に関する発言)を中止した。
  • 教育委員会の質疑が終わった後、休憩時間に入ったため、髙橋委員は平野委員長の不信任決議を提出したい旨申し出、委員長の了解を得た。
  • 髙橋委員はいったん会派室に戻り、「平野委員長の不信任決議案」を作成し、議会事務局に送付した。

不信任決議の可決

  • 休憩時間空け、当事者である平野委員長退席のもと「平野委員長の不信任決議案」が、髙橋委員から同委員会に上程、説明された。
  • 結果、賛成3名(川口委員、藤崎委員、髙橋委員)、反対2名(石井委員、押木委員)により、同不信任決議は可決した。

平野委員長続投の表明

  • 同不信任決議の可決の後、平野委員長が委員会室に戻った。
  • その折、藤崎委員より「平野委員長の不信任決議が可決したが、委員長を続投する意向か?」という趣旨の質問がなされた。
  • その質問に対して平野委員長は「続投の意向」を表明した。
  • その後、同委員会審議(福祉部所管部分)の審議が開始された。
  • 福祉部所管の議案審議終了後、川口委員より、「平野委員長の辞職勧告決議」の動議を上程したい旨発言があり、平野委員長により承認された。
  • 同辞職勧告決議案の文案作成のため、同委員会は暫時休憩に入った。

平野委員長の辞職勧告決議の可決

  • 午後1時00分、会議が再開した。
  • その後、平野委員長が退席のもと、「平野委員長の辞職勧告決議」が川口委員より上程、説明された。
  • 結果、賛成3名(川口委員、藤崎委員、髙橋委員)、反対2名(石井委員、押木委員)により、同辞職勧告決議は可決した。
  • 以降、委員会審議は、委員長席に戻った平野委員長のもと継続された。
  • 平野委員長からは、平野委員長に対して発出され可決した不信任決議、及び辞職勧告決議の可決に関して、何らの説明、弁明、総括もないまま委員会審議は継続し、終了した。

◆別添説明

平野裕子議員による「質問にひもづかない要望」事例

平成28年11月定例会経済環境常任委員会-12月14日-01号

○副委員長(平野裕子) 次回からの話になるのかもしれませんけれども、入れてもらいたいだと入れてくる団体と入れてこない団体とがやはりこうやって出てくる。その際に個別ヒアリングをしなければいけない状況がある。あと、下水道とかも片方は考えているけれども、片方は考えていないというところは、やはり何か審査の募集の段階できちんと準備が整っていないのではないかという部分を少し感じてしまうのですけれども、その辺やはり平等にだったら、きちんとしたやっぱりスタート段階で立つべきなのかと。その判断基準においても、どうしても専門知識、業務遂行能力って、資産管理経営室ではそこら辺はポイントには余りならないとはいえども、今回両方とも20点くらいの差がついているのです。そうなってくると、やはり審査の段階で、大きなポイントにもなってくるのかなとも思いますので、やはり平等がとれるやり方、あと済みません、ちょっと長くなりまして。
 あとは、印旛沼活性化計画というところで、やはり全体を考えたときに本当は飯野台も一緒に含めて考えてみるべきだと、もともとあったのがやはりちょっと難しかったというところを考えると、草ぶえの丘という水産農業発展、何かもともとの目的と、あとさらに言えば今新しく市のほうが前の事業者さんがですけれども、レストランを配置したりとか、ではその部分を含めて全部一体で、先ほどグルーピングでと言っていたけれども、そうするとやっぱりできる業者が限られてきてしまうと思うのです。やはりその辺をもう少し草ぶえに関しては実際これから佐倉市があそこの印旛沼活性化計画、あの周辺をどうしていくかの一番主になる部分だと思うのです。これからまだお金をかけていろいろなものを整理する、6次産業の部分にしても、やはりその辺は最初の段階の施策を全て企業に任せるのではなく、佐倉市の農業の発展のためには佐倉市がみずから考えて最初は行うべきだと考えます。要望しておきます。
(803文字:約2分30秒相当)

「議員必携」第九次改訂新版 第二編 議会の運営 〉 第五章 発言 〉 一 発言 〉 1.発言の自由と責任 (以下太字は筆者)

「議会は、“言論の府”といわれるように、議員活動の基本は言論であって、問題は、すべて言論によって決定されるのが建前である。このため、議会においては、特に言論を尊重し、その自由を保障している。会議原則の第一に、「発言自由の原則」が挙げられるのもそのためである。

国会については、憲法において「議員は、議院で行った演説、討論又は表決について、院外で責任を問われない」(憲法第51条)と定め、特別にそのことを明文で保障している。これを免責特権という。これは、戦時中軍部の言論抑圧によって国会が全く機能を失った苦々しい体験からみても、厳守されるべき当然の規定である。地方議会議員に免責特権はないが、その趣旨や精神は地方議会においても同様であって、もしも言論の自由がなくなれば、議員は、その職責を果たすことは、とうてい不可能である。

しかし、発言が自由であるからといって、どんな内容の発言も許されるというものではない。おのずから節度のある発言でなければならない。たとえば、議場の秩序を乱したり、品位を落とすものであったり、個人のプライバシーに関する発言まで許されるものではない。また、議会は、多数の議員から構成される合議体であり、議長がその会議を主宰しているわけであるから、一定の会議の進行に従った発言が行われなければならない。民主主義を基盤とする議会においては、このように秩序を重んじなければならないことは当然であり、おのずから会議のルールに従った節度ある発言が要求されるわけである。

それと同時に、発言者は自己の発言に責任を持つことが要求される。議会での議員の発言は、いかなる思想、信条に立つものであろうと自由であることは前に述べたとおりであるが、発言の内容によっては自己の政治的、道義的責任を問われることもあり、さらに法令や会議規則に違反した発言は懲罰の対象になることもある。」

髙橋注:上記の通り、議会はまず「言論を尊重し、その自由を保障」しなければならない。そのうえで、「一定の会議の進行に従った発言が行われなければならない」としている。今回の事例は、その意味で、髙橋委員の発言が「一定の会議の進行に従った発言」であったかどうかが問われるものである。さて、議員必携を前提とすると、「一定の会議の進行に従った発言」とは

  • 規定に合致した発言
  • 当該委員会に上程されている議案に関する発言
  • 慣例として認められている発言
  • 公序良俗に違反していない発言
  • 個人のプライバシーの暴露等を含まない発言

が前提となるが、髙橋委員の発言は、以上のいずれにも合致した発言である。故に、髙橋委員の発言は「発言自由の原則」にそぐうものであったと解されるため、平野委員長の髙橋委員への発言制止命令は、不当なものであったと解されるべきである。

名古屋高裁平成24年5月11日 渡辺修明裁判長 中津川市議会代読拒否訴訟 判決

「地方議会議員は,憲法で定められた地方公共団体の議事機関である地方議会(憲法93条1項)の構成員として,当該地方公共団体の住民による直接選挙で選出され(同条2項),議会本会議や委員会等における自由な討論,質問・質疑等を通じて,当該地方公共団体の住民の間に存する多元的な意見や諸々の利益を,当該地方公共団体の意思形成・事務執行等に反映させる役割を担っているのであるから,地方議会の議員には,表現の自由(憲法21条)及び参政権の一態様として,地方議会等において発言する自由が保障されていて,議会等で発言することは,議員としての最も基本的・中核的な権利というべきである。

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