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5億3千万円の返還と覚悟無き市長の給料減額処分

事務処理誤りに関する「市長の処分」の在り方と覚悟

2022年6月定例会

【記事の要約】

佐倉市では、新型コロナウイルスに関する国からの交付金について、その事務処理を誤ったことから、国に5億3,000万円を返還し、市の財政に4億2,500万円の損失を与える事案が発生した。

2022年6月議会では、本件について「市長の責任の取り方」である10ヶ月間市長給料10%カット(市長給料月額94万円であるため、カット額は月額9万4千円、総額94万円)」の是非を審議した。

この処分の重軽の価値観は、市民個々人により様々だ。

しかし、この審議の開始直後、市長は「どういう考えで減額の内容(給料10%カットとその期間)を決定したのか」という議員からの質問に自ら答えず、担当部長に答弁させた。

自身の処分について部長に答えさせる「緩み」を、私は市長の「どんな対応をしても議会が許可してくれる」という甘えと判断し、市長の「覚悟無き処分」に反対した。 本件について、さくら会等議員団からは一切討論もないままに、市長の処分内容は「問題なし」として可決された。 (以下本編)


損失4億2500万円をめぐる市長処分の議会審議

佐倉市では、新型コロナウイルスに関する国からの交付金について、その事務処理を誤ったことから、国に5億3,000万円を返還し、結果佐倉市の財政に4億2,500万円の損失を与える事案が発生しました。

本件について、その責任は当然に佐倉市の行政の長である西田三十五市長にあるため、相応の処分が下されることになります。他方、市長を含む執行部職員の処分について、判断するのは市長の仕事です。そのため議会では、市長自らが判断した「市長の責任の取り方」に関する是非を審議しました。

市長自らが下した「処分内容」の妥当性

市長から提示された処分内容は、2022年6月から2023年3月まで市長に支払われる「給料10%カット」というものでした。これにより削減される給料総額は94万円であることが、議会審議で明らかになりました。

事務処理誤りによる5億3,000万円の国への返還、4億2,500万円の佐倉市の損失に対して、市長の給料の減額の総額は94万円。この処分が重いのか軽いのか、は人それぞれであろうと思います。

私としては、直観的には「それは軽すぎやしないか?」と感じました。その理由を簡単に述べます。

私が感じる「西田三十五市長の特徴」

私が感じるところとして、西田市長はよくも悪くも、行政に「任せる」スタイルのマネジメントをしています。

元来が優しい人柄であることもあり、時に職員を叱責する、という「厳しい対応」が苦手なのだと感じています。

そうだとするならば、職員の綱紀引き締めには「自分に対する厳しい姿勢」を貫かない限り、確実に「舐められて」しまいます。問題に対する措置について、職員にも甘く、首長である自分にも甘いのならば、職員からすれば問題に対してしっかり対処しようという考えにならないからです。

また、後段詳述しますが、本事案発生から市長処分の議会審議までの期間で、西田市長には本件についてもう少し市民への情報発信を「率先して」実施してほしかった、という残念な思いがありました。

以上のような思いはありつつ、処分の「重い軽い」については、人それぞれに感じ方の違いがあるのも事実です。その意味で、94万円の給料削減という処分が「十分かどうか」については、私としては処分の内容とあわせ、西田市長が本件をどう考え、どう反省し、事後どのように防ぐか、ということとセットで判断すべきだと考えました。

そこで、処分の可否については議会の審議と市長答弁を聞いたうえで決めようと考え、極力フラットな気持で議会審議にのぞみました。

看過できなかった西田市長の「緩み」

私の見解が反対、つまり「市長の処分は不十分」と確定したのは、本会議での冒頭の質疑の折でした。質疑が始まった直後、五十嵐議員が「どういう考えで減額の内容(給料10%カットとその期間)を決定したのか」という市長質疑をしました。

この質問は極めて当然な、想定できるものです。この五十嵐議員からの冒頭の質問を、西田市長がしっかり正面から受け止め、真摯に答弁していれば、私は本件について賛成した可能性は十分ありました。しかし市長は、この質問に対して率先して手を挙げず、結果総務部長に回答させました。

自らの処分に対する当然な質問に対してすら、自分の口から説明できない市長に「覚悟と反省があるか」と言えば、「ない」と断じざるを得ません。

西田市長のこの振る舞いに、私は西田市長の中にある「看過できない緩み」があると考えました。具体的にいえば、「どんなに対応が緩くても、さくら会議員団が通してくれる」という緩みです。

処分を提示する前に市長がすべきこと

そもそも、本事案が発生してから、市長の処分が議会で審議されるまでの期間に、市長としてするべきことは多くあったはずです。

具体的に言えば、本事案に関する市民への報告と謝罪、今後の見通しを、真っ先に市民に対して自らの口で伝えるべきだったのです。

さらに、今後このような事案を発生させない対策や自らの処分を公開するスケジュールの見通しの公表も必要です。

また、具体的な処分や対策をすぐに発表できないのであれば、その理由を「広報佐倉」や公式サイトでの動画で説明しておかなければなりませんでした。しかし、市長はそうはしなかった。その点についても、私は市長の中に「最終的には議会(=さくら会等議員団)がなんとかしてくれる」という甘えがあったのだと思い至りました。

民主主義は、つまるところ住民の納得感を獲得しながら政を行うシステムです。その意味で、私は処分の重軽ではなく、市民への説明を怠り、最終審議である議会の現場でも部長の陰に隠れてしまった市長の振る舞いに対して「覚悟なし」という判断をしました。

髙橋とみお議員討論:45分20秒から)

本決が採決された6月6日の本会議で、さくら会等議員団からは一切討論がないままに、市長の処分内容は「問題なし」として可決されました。市民の代表がなす議会において討論がない、ということは「市民に説明すべき課題も意見もない」ということです。

「責任会派の真骨頂」というべきでしょうか。市長を守ることができ、さぞ安心されていることと存じます。17票が固定しているって、本当に強いですね。

2022年6月定例会 令和4年6月から令和5年3月までの間における市長及び副市長の給料の特例に関する条例の制定について 全議事録

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