- 2024.09.05
佐倉市職員向け持ち家手当
一般質問 2024年9月5日 佐倉市議会 髙橋とみお質疑
本手当は、佐倉市内で職員自身の持ち家に在住する市職員に対して「持ち家に対する手当(月額3,000円、年間36,000円)」を新設する、とする条例をもとにしており、今からちょうど2年前、つまり2022年の8月定例会で審議され、可決したものです。
当時本条例には、委員会審議、討論、また私を含む議員による言論活動により、大きくは以下のような批判があることが整理されました。
- 国の方針に反する条例案であり、我が国の9割以上の市町村が当該手当を廃止し、千葉県では佐倉市を含む全市町村が廃止した手当でありながら、佐倉市に特段の特殊事情はないにもかかわらず復活させること。
- 市が目的とする「職員の市内への居住を促進する」ことは、過去の他市の「持ち家手当復活自治体」の事例から、効果が見込めないという結果がすでにでていること。
- 以上より、市職員の持ち家手当で、年間数百万円の税金を使うことに、市民に対する説明がつかない。
他方、賛成議員の討論では、「激甚化する災害に備え、職員の市内居住を推進する持ち家手当は必要」とし、整理された批判にこたえることのないまま賛成、可決されました。 結果、千葉県内では佐倉市のみ、国の方針に反する「市職員向け持ち家手当」が復活し現在にいたります。
予算としては住居手当でみこまれている本手当が完全施行するのは、本年の10月からとなります。
そこで、質問です。
いわゆる「持ち家手当」について、昨年10月から完全実施するまでの本年10月までの段階措置の内容と費用の推移。また、完全実施する本年10月以降、当該事業予算の総額がいくらになると積算しているかうかがいます。
執行部(市役所)回答
総務部長答弁
髙橋議員、持家手当とおっしゃっておりますが、先般の改正ですと賃貸についても含まれておりますので、賃貸物件も併せてご説明させていただきます。
一般職職員の給与に関する条例第10条の2に規定する住居手当の改正案につきましては、令和4年8月定例会で議決をいただき、令和5年10月1日から施行しております。改正内容といたしましては、災害時、職員の迅速な参集を可能とするために、賃貸物件に入居する職員の住居手当の上限を2万8,000円から2万円に引き下げ、市内に居住する職員に対しましては賃貸物件に対する住居手当の上限額を8,000円加算するとともに、所有権を有する建物に居住する場合の住居手当を設けたものでございます。
段階的措置の内容でございますが、令和5年10月1日から令和6年9月30日までの間は、市外の賃貸物件に入居する職員に関する経過措置といたしまして、住居手当額の上限を2万4,000円としております。
次に、令和6年度の住居手当に関する予算でございますが、一般会計で申し上げますと、前年度比で167万円減となる約5,500万円、そのうち市内に居住する職員が所有権を有する建物に居住する場合に支給する住居手当分といたしまして、約550万円を計上いたしております。
目的の整理
ありがとうございました。
制度が完全実施される10月以降、年間で550万円の予算が見込まれることがわかりました。
それでは次に、本手当を実施するにいたった目的を改めてうかがいます。
執行部(市役所)回答
総務部長答弁
先ほどもご答弁申し上げましたが、職員の市内への居住を促進し、災害時における職員の迅速な参集による早急な対応を行うために条例改正をしたものでございます。
ありがとうございました。
「災害時に職員が素早く集まれる」という理屈と確認できましたが、それは的を外した目的と言わざるを得ません。
どの市町村でも同様ですが、被災現場の位置によっては、「市外に住む職員」の方が、「市内に住む職員」より早く被災現場に駆けつけることができることは多々あります。
現場参集という観点でいえば、「参集のしやすさ」は、現場までの物理的距離、川や崖地の有無といった地勢、道路等交通網の整備状況によって測られるものであり、「市内か市外か」という単純なものさしでは測り得ないからです。
例えば、台風で高崎川周辺が内水氾濫し、京成線が止まり、佐倉市の東西をつなぐ道路がところどころ水没した場合、佐倉市に住んでいるとはいえ、志津やユーカリに住んでいる職員は現場参集できず、酒々井町や八街市に住んでいる職員が参集することになるでしょう。その逆もまたしかりです。そのような場合、他市に在住の早期参集者に、佐倉市は本制度についてどう説明するのでしょうか?
「災害現場への早期参集」を起点とした場合の論点は「市内か市外か」ではなく、災害発生時に早期参集できた職員に対するまっとうな報奨制度の確立と、早期参集が不可能な遠い場所に住む職員をどう取り扱うかという点です。前回の議会で、特殊手当の要件が法的に緩和されたとよめる条例が可決したことからも、「災害時のまっとうな報奨制度」を構築することこそが求められます。
また、市内に持ち家を持つ職員のうち約15%の職員が課長、部長級の職員です。彼らには、その職責を全うするために「管理職手当」が支給されています。
さて、我が国には災害対策基本法があり、災害時には地方公務員がその対応にあたるよう規定されています。部長、課長級職員には、災害時にはマネジメント側で指揮を執る役割が求められますが、「管理職手当」は、当然に災害対応も予定して支給されています。
この条例案の目的を「災害時の早期参集のため」と説明をするならば、管理職の立場にある者は、「管理職手当と持ち家手当」という「手当の二重取り」をすることになります。
このような問題をかかえる職員手当は、私は一刻も早くやめるべきだと考えています。
現状と今後について
今後は、目的の達成に対して、どのような評価指標でのぞまれる予定か、またそれは何年で結果を出す想定かうかがいます。
執行部(市役所)回答
総務部長答弁
評価指標といたしましては、職員全体の市内外の居住率のほかに、賃貸借や持家の居住率を集計し、推移等を検証してまいります。
次に、検証期間でございますが、令和4年8月定例会の総務常任委員会でご答弁申し上げたとおり、効果測定に一定程度の期間が必要と考えておりますことから、制度改正が完全施行となる令和6年10月から5年を経過した令和11年度を目途としてまいりたいと考えております。
ありがとうございました。
一方、残念ながら本手当について、私は効果がないと考えております。
過去、私が議会でも討論で説明し、言論でも展開した内容ですが、それらをお読みでない市民の皆さまのために、本手当について、なぜ私が「効果がない」と断言しているかお伝えします。
平成21年の持ち家手当廃止に関する市町村への総務省通達以降、通達に反し持ち家手当を復活させた市町は2つあります。私は当時、その2つの市町から「持ち家手当により市内持ち家在住職員が増えたというデータはない」と言い切られました。
また、尼崎市は、市職員の市内居住促進のため、佐倉市の倍額の月額6,000円で市内持ち家手当を継続していたのですが、効果が無いという結論に至り、当該手当を廃止しました。
面白いのは、手当の効果を訴えるべき職員組合が「たかが 6,000 円の差で市内への転入の効果を期待することが間違いである。」と断言していることです。この件に関する限り、完全に同意します。資料をごらんください。
組合が、「たかが(月額)6,000円の差で市内への転入の促進を期待することが間違いである。」と明確に述べており、当局も「(月額)6千円の手当支給が(職員の)市内居住促進につながらなかった」と反省しています。
効果がないため持ち家手当を廃止した尼崎市の半額、月額3,000円の持ち家手当で効果を期待する佐倉市の制度に、どのように期待すればよいのでしょうか。
本条例案の効果がわかったとき、条例案に賛成した会派がどのような総括をするのか、今後も注視したいと思います。
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