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佐倉市議会で「委員会動画公開」を求めた7通の請願はなぜ不採択されたのか

委員会は誰のためにあるのか

2025年12月、佐倉市議会において、極めて異例の出来事がありました。
常任委員会等のインターネットによる動画公開(ライブ配信・録画配信)を求める請願が、別々の7名の市民から、同時期に7通提出されたのです。

請願は表現や切り口こそ異なるものの、共通して次の点を訴えていました。
委員会こそが実質的な審議の場であること、平日昼間に傍聴できない市民が多数いること、議会基本条例が求める情報公開と説明責任、技術的には配信が可能であること、そして過去10年以上にわたり同趣旨の請願が繰り返し否決されてきた理由が、市民に十分説明されていないという点です。

これら7通の請願は、参政党、共産党、市民ネットワーク、新社会党、無会派、そして弊会派「公開と改革」など、会派・政党を横断する7名の議員によって紹介され、議会運営委員会で一括して審査されました。

審議の過程で明らかになったのは、これらの請願が誰かの指示や動員によるものではなく、それぞれの市民が独立した問題意識から自主的に提出したものであるという事実です。

一方で、委員会動画公開に慎重または反対の立場からは、「不規則発言があり公開に耐えない」「個人情報流出の恐れがある」「議会の品位や秩序が損なわれる」「事務局負担が大きい」といった理由が示されました。これらは、過去の請願審議でも繰り返されてきた主張です。

とりわけ強調されたのが、「不規則発言があるから公開できない」という論理でした。しかし、完全に乱れのない議論の場は現実には存在しません。国会をはじめ、多くの地方議会では、不規則発言や発言訂正がありながらも公開が続けられています。公開そのものが、議論の質と責任を高めると考えられているからです。「問題があるから公開しない」という考え方は、「問題があるから改善しない」という自己矛盾を含んでいるのではないでしょうか。

地方議会において、本会議は最終的な意思決定の場ですが、条例や予算、事業の是非について実質的な議論が行われるのは委員会です。委員会は政策形成の核心であり、その過程がほとんど市民に見えない現状が妥当なのかが問われています。

さらに、佐倉市議会の議事録は公開までに2〜3か月を要し、文字情報だけでは議論の応酬や緊張感、運営の実態を十分に伝えられません。
近年、市職員向け持ち家手当の復活、公立幼稚園の閉園問題、小学校の統廃合、里山自然公園の民有地買収、西志津多目的広場の利活用など、市民生活や財政に直結する重要議案が委員会で相次いで審議されています。にもかかわらず、市民は「何が議論されたのか」を十分に知ることができないまま、結果だけを知らされる状況が続いています。

今回の7通の請願は、単なる動画配信の要望ではありません。
なぜ10年以上実現してこなかったのか、なぜその理由を説明してこなかったのか、議会は誰に向かって仕事をしているのか。その根本を問う、市民からの重い問題提起だと受け止めています。

採決の結果、7通すべての請願は不採択となりましたが、多くは同数または僅差でした。委員会内でも意見が大きく割れていることを示しています。一方で、「議会改革推進委員会で改めて議論すべきだ」という意見も出されました。

率直に言えば、私自身、審議では前のめりになりすぎた点もあり、反省すべき部分があります。しかし、「なぜ公開できないのか」「なぜ説明してこなかったのか」という問いに、十分な答えが示されたとは感じていません。 委員会の動画公開は技術論ではなく、議会が市民にどう向き合うかという姿勢の問題です。
今回の不採択によって、この問いが消えたわけではありません。むしろ、より明確に突きつけられたと考えています。今後も、記録を残し、言葉で問い続けていきます。

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