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佐倉市立3幼稚園閉園に関する佐倉市議会の結論と討論

佐倉市議会の速報です。

千葉日報等、朝日新聞、NHKなどで連日で報道されていた、佐倉市の公立幼稚園の閉園について、2023年9月26日火曜日、佐倉市議会最終日に結論がでましたのでお知らせします。

結果は、佐倉幼稚園1園のみ、1年間を目途に検討をすすめる。その期間「閉園」か「存続」かを方針決定するための猶予期間とし、閉園を見合わせる、というものです。

◆佐倉市の原案と3会派案

佐倉市が議会に提出した原案は、「本年度末で、佐倉市の公立幼稚園3園を閉園したい」とするものでした。
議案第16号 佐倉市立幼稚園設置条例及び佐倉市立幼稚園園児保育料徴収条例を廃止する条例の制定について

それに対して、さくら会、自由民主さくら、公明党の3会派が議会に提出(以下、「3会派案」とする)したのは、「公立幼稚園のうち佐倉幼稚園のみ、1年間を目途にその存廃を決める。したがって、方針決定までの期間は、佐倉幼稚園の閉園を見合わせる(応募者のいなかった他2園は閉園とする)」とするものです。
本案は、議会最終日に突然上記3会派によって提出されました。
発議案第2号 佐倉市立幼稚園設置条例の一部を改正する条例の制定について

この2案について、9月26日に議決され、結果3会派案が私以外の26名の賛成(私のみ反対)により可決されました。よって、佐倉市が提出した「公立幼稚園3園の閉園をしたい」とする原案は廃案となりました。

この佐倉市議会の議決により、事実上佐倉市立佐倉幼稚園の1園は、10月から改めて園児募集をはじめ、来年4月には新入園児を迎え入れることになります。

佐倉市が「閉園したい」とした最大の理由が、本年春の段階では来年の入園見込みがわずか1名になってしまったこと、です。
佐倉市立幼稚園の閉園方針決定について

なお、佐倉市の年間の幼稚園運営予算は8,800万円です。

◆私が3会派案に反対した理由

以上が、今議会話題となった、いわゆる「佐倉市立3幼稚園閉園議案」の結果とアウトラインです。

本件については、今後稿を重ねることになると思いますが、まずは私がなぜ3会派案に反対したのかをご確認いただくため、本会議でなした私の討論原稿を以下に公開します。

  • 以下討論原稿については、少々長いので、小見出しを追記します。
  • 「本代案」等の「3会派案」を指す代名詞表記は、わかりやすいようにすべて「3会派案」としました。
  • 動画が公開されたら後日動画のリンクをはります。

◆2023年9月26日:髙橋富人「公立幼稚園に関する3会派案に対する反対討論」

「こどものため」という言葉を議員が使う意味について

公立幼稚園の閉園に伴う一連の審議では、「こどものため」という言葉がとびかっています。

こどものため、という言葉を私たち市議会議員が発する場合、それは憲法13条や25条を前提に、世代間の税の分配に関する公正性の担保やその用途について、内容を仔細に把握したうえで優先順位の検討をすることが第一義だと考えます。

公立幼稚園の年間予算8,800万円の是非というミクロの視点も必要ですが、それは年間500億円以上ある一般財源の中で、先のとおりの基軸をもとに「こどものため」を思い検討する必要があります。

3会派案に対する反対理由

まず前提として、私は議案第16号に賛成の立場であり、したがって3会派案には反対です。

その理由は、大きくは以下二点です

  • 幼稚園の存続は、教育委員会が言う「同年代の幼児との集団生活を行う場」を提供する必要があるという観点に賛同でき、その意味で令和5年度の新入園児が現状1名という状況を考えると、公立幼稚園の存続は困難と考えること。
  • 以上の状況から、公立幼稚園存続にかかる8,800万円の用途を前提に、一般財源予算全体の検討したとき、公立幼稚園の閉園はやむなしと考えたこと。

次年度の園児が1名という教育委員会の説明は、仮に10月からしっかり応募をかけた場合を考慮にいれれば、もう少し人数は伸びるでしょう。

しかし、仮にその数が増えても10名に満たない可能性は高く、昨今の佐倉市の出生率の著しい低下を見る限り、今後数年は急激な回復も望めません。

その観点でいえば、仮に公立幼稚園を存続した場合でも、園児の集団生活の担保という点において、責任を持った幼稚園教育は提供しづらいものがあります。

また、そもそも国策により幼稚園、保育園等の3〜5歳児クラスのすべての子どもの保育料が無償となった現状を鑑みれば、公立幼稚園が一定の役割を終えたとする執行部の説明にも説得感はあると考えます。

さらに、障害のあるお子さんの最後の受け皿となるのは公立幼稚園だ、という議論もありますが、それは法改正により公立私立にかかわらず応諾義務があることから、その理屈も現在では合理性が薄いでしょう。

執行部の問題と市民の声

しかし一方で、執行部のこれまでの対応にも大いに問題があるのは確かです。

具体的には、方針のふらつき、拙速さ、説明不足の3点です。

特に、説明不足という点について具体的事例をもとに指摘します。

保護者、執行部双方にヒアリングし判明した点として、保護者のみ参加できる非公開の説明会の現場で、閉園ありきで同じ説明を繰り返した執行部の対応は、透明性の観点からも、説明の在り方についても批判は免れず、公立幼稚園の存続を求める保護者の皆さまに不信感を持たれて当然だと考えます。

教育委員会のそのような姿勢については、猛省をすべき点があったのは確かです。

現在、公立幼稚園の存続を求める保護者の皆さまが現在教育委員会に求めているのは

「佐倉市の公立幼稚園あり方検討会を立ち上げて、学識有識者や現場の先生、保護者、地域住民をメンバーに入れ、改めて「佐倉市の公立幼稚園のあり方」を作成してほしい。その上で閉園すべきかどうか考えてほしい。」

となっています。

この要望は、公立幼稚園の存否以外にも、そもそも論として、公立幼稚園の意義、予算や人員配置、佐倉市の全公立幼稚園後のビジョン、閉園とした場合の施設立地の利用方針等を総合的にその在り方を検討する諮問委員会を立ち上げ、答申を得たうえで方針決定してほしいとする要望であると理解でき、首肯すべき点があると考えます。

またその答申を得るまでの期間、公立幼稚園を存続させるべきというなら、その点は検討の余地があるでしょう。

私としては上記のとおり、本年度公立幼稚園の閉園をすべきという立場に変わりはありませんが、以上のとおり諮問機関による幼稚園の在り方の検討を前提に、結果として公立幼稚園の閉園を必要期間延長するというならば、より深い議論ができたとは思います。

その場合、主従の関係はあくまで、諮問機関の設置によるあり方検討が主、結果としての閉園延期は従です。

しかし、3会派案はその点は考慮されておらず、佐倉幼稚園の存否について、単に「条例の施行後1年間を目途として」検討するという趣旨であることが、会派代表者会議や本会議での質疑におけるさくら会平野議員の答弁で明らかになりました。

これでは、諮問委員会の立ち上げが前提となっていないため、一部保護者の皆さまにはすでに信頼関係が損なわれている教育委員会が、説明を繰り返すために存続期間の一年を費やす、ということになりかねません。

ここまで状況が紛糾した以上、諮問機関による客観的な検討が必要と考えますが、その点が考慮されていない本案には疑問が残ります。

また、3会派案は、検討期間が条例施行から1年間をめどに結論を得る、となっています。

条例の施行日は令和6年4月1日であることから、これまでの他の条例運用や、国の法律の運用を鑑みれば、結論を得るのは翌年令和7年4月1日ということになります。

そうなると、佐倉幼稚園は本年令和5年度の他、令和6年にも募集をかける必要がでるため、あしかけ2年間の存続ということになります。また、令和6年に二年保育の児童を受け入れた場合、一般的にいえばその児童が卒園するまで存続させる必要があるため、3年存続が前提の条例案ともとれます。

存否の検討は、①本年の募集園児の人数、②諮問機関の答申結果、の2点で充足する、という観点からいえば、条例の施行日は議会での議決直後とするのが妥当でしょう。

先のとおり、園児数が少ない状態で、年間8,800万円の幼稚園予算を2年から3年間存続させる可能性が高い3会派案の建付けには、疑問を感じざるをえません。

以上、私個人としては公立幼稚園の閉園をする原案に賛成である、という点と、その代案である3会派案について以上のとおり練り込みがまったく不十分である理由につき、二重の意味で本案に反対いたします。

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